勤務先のインフラ会社からただ一人派遣され、アジアで下水道整備の技術指導をしている友人が久々に帰国したら、「現地の建設業者らと闘争中」と穏やかでない。
話を聞くと、工事中の施設の壁は本来、400ミリの厚さが必要なのに、現地の業者らは壁の厚さを強調するように太く描きながら、その脇には小さく200ミリと書いた図面を持ってきて承認しろといってきたという。
それに対して友人は拒否し、訂正を求めたところ、業者らは発注元の地元自治体に働きかけて友人を罷免するよう要求した。もちろん、友人は業者らに反論するレターを自治体に提出。その間、工事は中断という状態だ。
途上国ではこうした手抜き工事によって利益を水増しするケースが少なくないという。それによる建物倒壊で死傷者が出る悲劇も頻発している。
友人は最終的な工事責任者であり、現地の住民らの安心、安全にかかわることだけに「目をつぶるわけにはいかない」と強調する。日本の企業が請け負うさまざまな途上国の現場で、倫理を曲げない日本人技術者がいることは頼もしい限りだ。