テロリストの目的は身代金ではない。筆者は、「イスラム国」の設定した土俵で日本政府やマスメディアを踊らせ、日本人に「イスラム国」が描いたシナリオを阻止することはできないという無力感を抱かせることがテロリストの目的と認識している。
「イスラム国」が目指しているのは、世界イスラム革命だ。「イスラム国」とこの「国」を支持する人々は、唯一神アッラーの法(シャリーア)のみが支配するカリフ帝国(イスラム帝国)を21世紀の世界に本気で建設しようとしている。この目的を実現するためには、暴力やテロに訴えることを躊躇(ちゅうちょ)しない。今回の日本人人質事件は、7~9日にフランスで起きた連続テロ事件の文脈でとらえるべきと思う。「イスラム国」は暴力やテロという手段も用いて世界イスラム革命を実現することを決めた。
積極的平和主義を掲げる安倍晋三首相が今回、中東諸国を歴訪したことが、テロの原因になったという見方は完全に間違っている。このタイミングで安倍首相が中東を訪れなかったとしても、いずれかのタイミングで「イスラム国」は、この種の脅迫を行ったと思う。なぜなら、既存の国際法、自由、民主主義という普遍的価値観を順守する日本が米国、欧州諸国、ロシアとともに「イスラム国」による打倒対象とされているからだ。