コミンテルンに重なる姿
過去の歴史で、「イスラム国」によく似た機能を果たした組織がある。1919年3月に創設された「コミンテルン」(共産主義インターナショナル=国際共産党)だ。17年11月にロシアで社会主義革命が成功したのを受けて、ボリシェビキ(共産主義者)は、世界的規模で革命を起こそうとした。その指令塔となったのがコミンテルンだ。コミンテルンの本部はモスクワに置かれたが、ソビエト・ロシア(22年以降はソ連)とは関係ないという建前だった。コミンテルンの公用語は、ロシア語でなくドイツ語だった。コミンテルンは各国に支部を作り、革命運動を指導した。日本共産党も当初は、国際共産党日本支部と名乗っていた。ナチス・ドイツと戦う際にコミンテルンが存在すると、ソ連と英米など資本主義国との同盟関係に支障を来すので、43年11月にコミンテルンは解散した。「イスラム国」の目的が世界イスラム革命で、その目的を実現するためには、日本の国家体制を破壊することが不可欠になるという現実を冷徹に見据える必要がある。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)