マイペースでおおらかな村上真雄さん(左)、しっかり者で努力家の由美さん(右)の夫婦。自宅も障がい特性にあわせて、暮らしやすいように工夫しているという。写真中央は一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる(越智貴雄さん撮影、提供写真)【拡大】
だが、音や光が苦手な感覚過敏があったり、人の顔が判別できなかったり、こだわりが強かったり、自閉症の特性が強いあおさんの生活は容易ではない。「自分のスペックがよくわからない」とあおさんはポツリ。「お釣りの計算ができなくて、いつも10円がキャッチ・アンド・リリースされてくる。いくら使えばいくら残るのかがわからないから怖くてお金が使えない」。一方のくらげさんは宵越しの銭は持たないタイプで、あるだけ使ってしまうため、通帳やキャッシュカードはあおさんが預かっている。「尻に敷かれているのは私なんです」と、くらげさんが言うと、すかさずあおさんが「座り心地は悪くないです」。
熟練の漫才師のよう
2組どちらもジグソーパズルの凸凹がカチッとはまるようにしっくりくるカップルだと思う。だからといって「思いやり合っている」とか、「愛し合っている」とか、そういうことではない。何だろうこの感じ…と考えていたら思い当たった。熟練の漫才師だ。独特のテンポ。声を張ることなく、力の抜けた感じのボケと鋭いツッコミ、言葉足らずの相方の説明のフォロー、ポロリとこぼれ落ちたような言葉も拾い、みごとネタにする。クスクス笑いの中に、時折ドカンとした笑いも入れてくる(笑う私たちを「何がそんなにおかしいの?」と見る顔がまたいい)。