世界の女性たちが憧れるフランスの高級ブランド「クリスチャン・ディオール」。1947年に創立者、クリスチャン・ディオール(1905~57年)が初めてコレクションを発表後、65年の歳月を経た2012年、ベルギー出身のラフ・シモンズ(47)が主任デザイナーに抜擢(ばってき)された。フランスの映画監督、フレデリック・チェン(36)は、オートクチュール(高級注文服)の経験がないシモンズがどんな仕事ぶりを見せるのかに興味を抱き、彼に密着したのが新作ドキュメンタリー「ディオールと私」だ。
8週間で54体完成
「シモンズの前任、ジョン・ガリアーノをはじめ、クリスチャン・ディオールのファッションデザイナーたちは大勢の人が思わず目を奪われる美しいデザインを披露してきました。でも、シモンズの場合、そういう典型的なイメージがありませんでした。私は彼のそんな部分を探ってみたいと思ったわけです」
パリ・コレクションまで残された時間はわずか8週間。シモンズは強烈なプレッシャーを受けながらも、54体のオートクチュールを完成させるため、105人の「お針子さん」たちと大胆かつ緻密な戦いに挑む。