SANKEI EXPRESSの電話取材に応じたチェン監督は「シモンズがきっと成功するという確信はまるで持てませんでした。僕はもう完全にチームの一員になってしまったような気持ちだったから『どうしよう、どうしよう』と一緒に慌てていましたね」と明かした。ただ、最大の関心は成功の可否ではなく、シモンズの感情の旅路にあり、人間としての成長や変化を描くことが一番重要だった。
刺激的で魅力的
チェン監督がオートクチュールに興味を抱いたのは、ファッション分野の中でもっとも夢のあるエリアだと感じたからだ。「実際にこの目で見ないとまるで分からない世界で、クリエーティブな才能たちがいろんな形で花開いています。見ていて刺激的です。また、伝統とモダンという価値観のせめぎ合いがあり、その上でオートクチュールは現代にしっかりと息づいています。映画の作り手にとって、それは魅力的なことですね」
作中、シモンズとお針子さんたち-新旧の価値観を持つスペシャリスト同士が話し合いを重ね、クリエーティブな関係を深めていく様子が丁寧に映し出されたのはそのためだ。「クリスチャン・ディオールは、新しいデザイナーを受け入れながらも、伝統を維持し、ブランドをずっと生き続けさせてきた。これがやはり愛されている理由だと思います」