思い入れの強い舞台を今年も上演する坂上忍さん=2014年5月12日、東京都港区(中鉢久美子撮影)【拡大】
なぜ坂上はそんな物語を執筆したのだろう。「初演は東日本大震災の後でした。人の生死を題材に当たり障りのない美しい内容を書くのも僕の性に合わない。『この時期にやっていいの?』という、えぐいテイストで描けないかと、僕は考えたんです」。批判を覚悟のうえで上演を強行した。
極めて誤解を生みやすい内容だが、坂上の言わんとするところは、「まともなやつなんか誰もいなくて、みんなどこか心が歪(ゆが)んでいて、傷をかかえているものだ」というメッセージ。死を描くことで、生きる意味をじっくりと考えさせるという、一癖ある坂上流の真骨頂が発揮された形だ。
坂上は自殺に対して、「テレビでも発言していますが、否定派ではない」という。もっと正確に言えば、人生を精いっぱい生きることは大前提とした上で、「法律が許すならば自ら命を絶つという選択肢があってもいい」-というスタンスだ。作品の底流には坂上のこんな信念が深く根付いている。