初会談で厳しく応酬した沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事(左)と菅義偉(すが・よしひで)官房長官=2015年10月5日午前、沖縄県那覇市内のホテル(共同)【拡大】
「抑止力維持と基地負担軽減は本来、相反する」(自衛隊幹部)が、両立が可能なのは辺野古移設だけだ。一方で、「日米安保条約に理解を示す」というのは翁長氏の常套(じょうとう)句だが、どう理解を示すのか明言していない。そこに踏み込めば支持基盤の革新勢力との間に亀裂が生じるからだ。辺野古移設以外で抑止力維持と負担軽減を両立させる代替案も未検討だ。菅氏は初会談でこれらの論点を確認した。それが戦略転換への布石となる。
政府高官は「辺野古に造る、造らせないという一点に矮小化(わいしょうか)されている」と指摘する。そうではなく、より広い視点で辺野古移設の意義を国民に訴え、沖縄県民の理解も求める姿勢を強める-。それが菅氏の戦略転換の方向性だ。翁長氏も「日本の安全保障は国民全体で考えてほしい」と主張してきた手前、菅氏の戦略変更にも応じざるを得ない。「本土に負担を分かち合ってもらうための世論喚起は歓迎だ」と評価する県幹部もいる。