訪米中の安倍晋三(しんぞう)首相は4月28日、首都ワシントンのホワイトハウスで開かれた公式夕食会で、冗談を交えたスピーチで、昭恵夫人(右)、バラク・オバマ米大統領(中央)らの笑いを誘った=2015年(ロイター)【拡大】
安倍首相は米国への出発前、周囲にこう語っていた。豪州議会演説で首相は外務省が作った当初案にあった「謝罪」を外し、豪州の戦争犠牲者に深い哀悼の誠をささげることで、豪州議員らから喝采を受けた。
今回の米議会演説でも、アジアや米国の犠牲者に対する反省や心からの哀悼の念を示すにとどめる。大切なのは定型句ではなく、理念であり共感を呼ぶ思いであるからだ。
これまで安倍首相は、「歴史修正主義者」とのレッテル貼りを受けてきた。オバマ氏やその周囲も、安倍政権発足当初はそうした見方に影響され、首相に警戒心を隠さなかった。だが、そうした疑念は徐々に薄れつつある。
安倍首相は今回の訪米中でもワシントンで、ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺を展示するホロコースト記念博物館を視察した。今夏発表する戦後70年談話を見据え、一貫して平和を願ってきた姿勢を改めて強調し、こうした懸念を払拭したいからだ。
この際、記者団に「悲劇も善意の勇気も風化させず記憶にとどめ、日本として世界の平和と安定のため積極的に貢献しなければならない」と強調した。歴史を直視していることを訴えつつ、あくまで未来志向でいくという2つの意味を込めたメッセージだ。(ワシントン 峯匡孝/SANKEI EXPRESS)