リードパンチを応酬し合うフロイド・メイウェザー(左)とマニー・パッキャオ。「世紀の対決」は片時も目が離せない濃密な内容だった=2015年5月2日、米ネバダ州ラスベガス(AP)【拡大】
試合は米国で行われながら、観客の声援はフィリピンの国民的“英雄”パッキャオ一辺倒で、メイウェザーにとっては逆ホームタウンの完全アウェー状態だった。試合開始時の選手アナウンスでリングアナは“マネー”の枕詞を付けてメイウェザーを紹介。試合終了直後、勝利を確信したメイウェザーがリングロープにかけ上がり、「どうだ」とばかりに胸をたたくと、会場は大ブーイングの嵐に見舞われた。
勝利のポイントは超絶のディフェンスだった。パッキャオの攻勢に常にステップバックを余儀なくされロープを背負いながらも、抜群のボディーワークでパンチを外す。中盤以降はノーモーションの巧みな右ストレートで、左の相打ちを狙ってくるパッキャオの攻め足を鈍らせた。最大の持ち味、スピードは最後まで落ちなかった。
危険を冒さず確実にポイントを奪うメイウェザーの退屈な試合運びはしばしば「タッチボクシング」などと揶揄されるが、この日の試合はいささかも「世紀の対決」という評価に違(たが)うものではなかった。倒すか倒されるか、ミリ単位の攻防でパンチを交えた超ハイレベルのファイトだった。パッキャオは試合後、「私が勝ったと思った。なぜなら彼は何もしていない。ジャッジの判断は違ったが…」と話し、敗戦を受け入れがたい様子だった。