シンガポールで開かれたアジア安全保障会議の会場で握手する中谷元(なかたに・げん)防衛相(左)と中国人民解放軍の孫建国・副参謀総長。孫氏の会議での一連の発言は、中国の孤立を助長させた=2015年5月30日(AP)【拡大】
米軍と一戦も辞せず?
FIFA幹部の逮捕に憤りは感じたが、驚きはしなかった。ケタはずれの賄賂を懐に入れる中国軍幹部の汚職を何度も報じてきた小欄は「免疫」ができてしまったらしい。反面《ますます醜悪になった》中国の安全保障観は分析の度、増殖するバイ菌に触れるのに似た不快感に襲われ、吐き気をもよおす。
孫上将はまるで王朝に仕える将軍のごとく振る舞った。南シナ海で続ける岩礁埋め立て=人工島建設→軍事基地化→領有権設定を「合法で正当かつ合理的活動」と開き直り、南シナ海は「平和で安定している」とうそぶいたのだ。即時停止や不法な領海設定阻止に向け、人工島の22キロ以内で海軍艦艇・哨戒機を活動させると警告する米国への反発であった。
「平和で安定している」にもかかわらず共産党系の環球時報紙は社説で《中米軍事衝突の危険が高くなった/米国が中国に教訓を与えるとの傲慢なたくらみを持ち、一戦も辞さないなら、尊厳のために戦う》と勇ましい。孫上将も「米国などが(中国と関係国の)不和の種をまいていることに強く反対する」と喧伝するが、中国が軍事的膨張・冒険を強行しなければ現下の緊張・対立は起きなかった。加害者が被害者を装う立場のすり替えは堂々とし過ぎで、いつもながら滑稽だ。