エルマウ・サミットで、会場に向かう(左から)安倍晋三(しんぞう)首相、アンゲラ・メルケル独首相、バラク・オバマ米大統領=2015年6月7日、ドイツ・エルマウ(ロイター=共同)【拡大】
その後、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)へ話題を展開させたのも安倍首相だった。「インフラ投資は適切なガバナンスの下で行われなければならない」と指摘した安倍首相の発言をきっかけに、G7首脳は中国経済をテーマに議論を始めた。AIIBについては、安倍首相が「参加、不参加にかかわらず、情報共有などで連携して対応しよう」と提案し、同意が得られた。
外交政策を議論したワーキングディナーでも、南シナ海などアジア情勢に関して安倍首相が問題提起し、中国の岩礁埋め立てに対し、G7首脳として「強い反対」との意見をまとめ上げた。サミット前には、さまざまなテーマでG7の結束に懐疑的な見方が強かった中、AIIBや南アジア情勢などで意見の一致をみることができたのは、安倍首相にとって大きな成果といえる。
その内幕について、同行筋は「事前に議長国のドイツから、第1セッションの冒頭、安倍首相にある程度まとまった時間を取って発言の機会を与えると打診があった」と明かす。サミット冒頭の基調発言は2日間の討議全体のムードを決定づけるものであり、首相は、議論の展開のシミュレーションも含め、入念な準備の上で本番に臨んだ。サミット前日夜も、日本政府関係者による夕食会を早々に切り上げて、発言のチェックをしていたほどだったという。