安倍晋三政権が軍事研究をめぐる東京大学の迷走に頭を痛めている。政府は大学の軍事研究の有効活用を目指す国家安全保障戦略を閣議決定済みで、毎年800億円規模の交付金を東大に捻出している。このため、東大(当時・浜田純一総長)大学院情報理工学系研究科が昨年、軍事研究を解禁した。ところが、その後、曖昧な姿勢に転じ学内で混乱を引き起こしているのだ。政府予算獲得のため軍事研究に前向きな姿勢を示す一方、学内反対派の顔色も伺う必要性があり板挟みになったとみられる。4月に新総長に就任した五神(ごのかみ)真・前理学部長(57)も沈黙を守っており、東大のカバナンス(統治能力)欠如が浮き彫りになっている。
前総長見解に矛盾
五神氏は4月17日、総長就任記者会見に臨んだが、軍事研究に関する自身の考えの表明はなかった。そもそも1959年と67年に軍事研究禁止を確認した東大の評議会は単なる審議機関で、軍事研究の是非など運営方針の決定権は総長にある。総長には審議結果に従う法的義務はない。だが、東大は評議会での一部の総長らの軍事忌避に関する発言をよりどころに禁止方針を自動的に継承してきた。