安倍晋三首相(60)が衆院選の遊説で全国各地を奔走する中、政権が最大の政治課題と位置付ける拉致問題に関する動きもひそかにあった。北朝鮮側は11月下旬、北朝鮮で埋葬された日本人遺骨問題の進展を図るため日本国内で開催されるシンポジウムに研究者を出席させることを検討し、拉致に関与した疑いのある「よど号」犯からの聴取も実施した。ところが、日本側からすれば、これらは拉致問題解決への誠意ある対応と受け取れるものではなかった。
遺骨巡る日朝攻防激化
10月下旬の2日間、平壌で行われた日本政府代表団と北朝鮮の特別調査委員会との協議は計10時間半にわたった。その間、日本は100を超える質問を北朝鮮にぶつけ、いくつかの回答が得られた。政府高官は「マスコミにはほとんど漏れていないが、協議を受け北朝鮮が思惑を持って動き出している」と指摘した。
日朝関係者によると、現地で遺骨調査を進めてきた朝鮮社会科学院歴史研究所のチョ・ヒスン所長が11月、来日を模索していた。“来日”期間中には、関西地方の大学などでシンポジウムが開催され、終戦前後に現在の北朝鮮で死亡した日本人の遺族による墓参を支援してきた民間団体「朝鮮北部地域に残された日本人遺骨の収容と墓参を求める遺族の連絡会」(北遺族連絡会)が参加者を募っていた。連絡会の活動は朝鮮総連が支援しており、チョ氏の出席が見込まれていたが、結局チョ氏の来日はなかった。