北朝鮮には現在、メンバー4人と妻2人が滞在している。このうち魚本(旧姓・安部)公博容疑者(66)とメンバーの妻2人について、日本の警察当局は欧州での日本人拉致事件に関与した疑いがあるとして、結婚目的誘拐容疑で国際手配している。
日本政府は魚本容疑者ら3人の身柄引き渡しを求めてきたが、北朝鮮は無視し続けてきた。このため、「今回の聴取は、よど号犯が拉致に関与していないということを証明するためのポーズに過ぎないのではないか」との疑念もくすぶる。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)は10月31日の記者会見で、北朝鮮による拉致問題再調査の最初の通報について「常識的には年内」と発言した。だが、平壌での協議で北朝鮮側は期限に関して言及していなかったため、外務省幹部は慌てふためいた。
そもそも北朝鮮は「夏の終わりから秋の初め」とした1回目の報告をほごにしている。年内報告が実現しなければどうなるか。安倍首相は北朝鮮政策について「対話と圧力」を信条としてきた。拉致問題をはぐらかされれば、理論上は北朝鮮への経済制裁の再発動が現実味を帯びることになる。果たして「圧力」強化に傾くのか、衆院選後の首相判断が注目される。(比護義則/SANKEI EXPRESS)