11月19日、首都パリのアンバリッド(廃兵院)での閲兵式に出席したフランソワ・オランド仏大統領。同時多発テロ発生を受け、「戦争状態」を宣言したオランド氏だが、テロの“進化速度”に民主主義国家の諜報機関と法律がついていくのは容易ではない=2015年、フランス(ロイター)【拡大】
(1)過激化しつつある前歴者(11年1月)→(2)特別監視対象者(9月)→(3)直接の脅威(11月)といった具合に。アフガン諜報機関もメラ入国をDCRIに連絡したが、渡航禁止措置すら採れなかった。結果、児童は髪の毛をつかまれ引き寄せられ、頭を撃ち抜かれ、あまつさえ首に付けたカメラで「瞬間」を撮影される。
1月の仏風刺週刊紙本社銃撃犯兄弟も11年に監視対象にしながら13~14年に解除。今次多発テロでも、劇場襲撃犯は12年以後監視対象で、13年にはシリアに渡った。
逮捕・起訴に向けた証拠基準もあまりに厳しいのだ。これでは人員不足をやり繰りして監視しても、テロリストを眺めるだけで終わり、やがて見失う。
法律は沈黙できるか
ところで、今次テロ被害に遭ったレストランの入り口を撮った写真にWiFiの表示が映っていた。小欄には、仏法整備の軌跡を彷彿させる一枚だった。
フランスは1970年以降、パレスチナ組織やシリア/イラン政府機関、アルジェリア武装集団の標的と成り、対テロ関係法整備も9・11前から度々断行した。特に2004~05年のスペインやロンドンの同時爆破テロ(計247人死亡)に驚愕した06年の法改正は象徴的だ。その一項に《WiFi接続業者やネットカフェ、飲食店やホテルにも交信記録保存義務を拡大》が在る。