現在でいうところの「トランスジェンダー」や「性同一性障害」といった状態に置かれ、苦しみ抜いた結果、世界で初めて男性から女性への性別適合手術に踏み切ったデンマークの画家、リリー・エルベ(1882~1931年)をご存じだろうか。そんな“彼女”の壮絶な体験をベースに描いた伝記ドラマが、オスカー監督、トム・フーパー(43)の手により「リリーのすべて」として映画化された。ちなみに原題は「The Danish Girl」(デンマークの少女)。
難しかった役作り
人間は自分のアイデンティティーが不安定な状況に陥った場合、どんな思考を展開し、どんな生き方を模索するのか? 主演の英俳優、エディ・レッドメイン(34)は自分なりに脚本を解釈し、演技を通して誠実に提示してみせた。
「一番難しかったのは感情面の役作りでした。私はリリーの気持ちや考えを理解しようと努めたのです。特に1920年代という時代に性別適合手術を決断したリリーの気持ちですね。リリーに手術以外の選択肢はありませんでしたが、その生き方こそがリリーのあるべき本当の姿なのです。もちろん手術を受けることは危険な賭けであり、命を落とす可能性もありましたよ」。大きな仕事を終えたレッドメインは現地報道陣にホッとした表情を見せた。