速いだけじゃない、パッケージに優れた万能選手 スバル・レヴォーグ
試乗インプレ発売から1年半を過ぎ、街中でも見かける機会の多くなったスバル・レヴォーグ。北米市場向けにサイズの大きくなってしまった定番車種レガシーに代わるべく、日本市場向けに開発されたステーションワゴンだ。今回は300馬力を誇る高性能エンジンを搭載した最上位グレードに試乗。国内メーカーが軒並みミニバン重視のラインナップになるなか、頑なにステーションワゴンを作り続けるスバルの、新しい看板車種の人気の秘密に迫る。(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)
赤が似合う若々しくスポーティーな外観
サイズ感は日本の道にジャストフィット。横幅こそ170センチ超えの3ナンバーサイズながら、全長は短めに抑えてあるので、取り回しよし。外観デザインはルーフ後端を下げ、荷室容量を犠牲にしてリアウインドーも寝かせ、商用車っぽくなりがちなワゴンを若々しくスポーティーに見せている。ステーションワゴンとシューティングブレーク(クーペっぽいワゴン)の中間のような趣がある。エンジンを低くできる水平対向エンジンのおかげで、ボンネットが低めなのもスポーティーに見える理由だろう。ただ、前輪のオーバーハングが長めなのは、少しバランスが悪く見えて惜しい。エンジンとの配置の関係でこれ以上前に出せなかったのだろう。
しかし、このクルマは赤がよく似合う。大きすぎないサイズと、デザインの若々しさに色味がマッチしていて、このクルマを買うなら赤しかないと思ってしまった。
質感高いインテリアはゴルフを意識した?
品よく機能的にまとめられたインパネ。どことなくフォルクスワーゲン・ゴルフに似ているのは気のせいか。質感もゴルフと同等。自光式メーターも高級感を高めている。シートのフィット感がちょうどよかった。ゆったり座れるのに、脇、腰、肩のサポートがしっかりしていて疲れが少ない。最近試乗したクルマの中では一番自分に合っていた。長めのホイールベースのおかげで、後席足元もこぶし2つと余裕がある。リクライニング機構もあって長距離移動でもリラックスできる。センタートンネルがそれほど高くなく、短距離なら大人5人でもなんとかいけそう。後席の窓が全開するのも嬉しい。
さすがワゴンの老舗 使い勝手よく、車中泊可能な広い荷室
後席を倒すと大人2人が横になれる空間ができる。実際に身長173センチの私が仮眠してみた(本当に小一時間寝ました)。荷室はほぼフラットで、背中が痛くなるような段差や突起はない。さすがに足はほんの少しつかえたが、斜めに寝ればいっぱいまで伸ばすことができた。シングルベッドを一回り小さくしたくらいの面積だ。ぼっち旅なら、車中泊もいける。もはやミニバンに準ずるくらいの広さである。
特筆すべきは床下収納。かなりの深さがあって、実用性が高く、いろいろな使い道が考えられそうだ。荷室の間口は低く、段差もないので、重く大きな荷物の積み降ろしもしやすい。このあたりは日本のステーションワゴン市場を開拓・牽引してきたスバルならでは。難点は、スポーティーなスタイルを優先した結果、リアハッチの上端が低いこと。面積は広いが、高さのあるものを積むには床下収納の蓋を外すなど工夫が必要になる。
道路の継ぎ目が気になる硬めの乗り心地 意図的な設定か
今回の試乗は千葉県が舞台。高速道路は京葉から東金、九十九里道路から館山道へ。山坂道は養老渓谷周辺を走った。乗り心地は全般的に硬めだが、スピードに乗るほど安定する。接地感が非常に高く、安心してアクセルを踏み込める。その一方で、高速の継ぎ目乗り越えが気になるなど、ダンパーがうまく働いてない感じが惜しい。これはスポーティーモデルとしての意図的な設定もあるのだろうが、フル乗車で荷物も満載、というステーションワゴン本来の用途を考えた上での設定なのかもしれないとも感じた。
過剰とも思える強烈なパワー ダイレクト感薄めのミッション
リアルスポーツセダンのWRX・S4に積まれているのと同じこのエンジン、公道ではとてもその全性能を使い切れない。高速道路の料金所からの発進で試したが、時速0~100キロでの加速は6秒を切っていた。アクセルレスポンスがよく、すごい加速。しかしながらGはさほど感じず、気がつくととんでもないスピードになっているという感じ。300馬力、40キロのトルクは伊達ではなく、トルク感がクルマのサイズ感を遥かに超えていて、1.5トンの車重を全く感じさせない。それでいて、過敏すぎることなく、扱いやすい。ボディ剛性の高さと相まって、欧州車、特にドイツ車のようなカッチリした乗り味。これでダンパーの効きを調節できたら本当に欧州の高級車並みになる。2500回転あたりからターボ過給の「シューン」という音が程よく聞こえて気分が盛り上がる。
CVTなのでダイレクト感は薄い。トルコンATのようなステップ変速をしているということだが、あまり体感できなかった。実際よりも加速感がソフトなのはこのせいかもしれない。ドライブモードを「S#」に切り替えるとダイレクト感が多少出るが、このエンジンはDCTで乗ってみたい。不自然さはないので慣れの問題と思うが、ちょっともったいない。
コーナリング限界は遥か遠くに アクセルベタ踏みでもホイールスピンなし
あいにくの小雨模様だったせいか、養老渓谷付近は通行量も少なく、これ幸いと元気よく走らせてもらったが、このスピードではやばいかな…というような急カーブでも、何事もなかったかのように意図通りスッと曲がってしまい驚かされる場面が続いた。コーナリングの限界が私のような素人ドライバーの与り知らぬ遥か遠くにあるという印象を受けたし、裏返せば極めて安全ということでもある。
圧雪路や、凍結路のような全輪駆動の真価を確かめられる路面抵抗の小さい場面は残念ながらなかった。これはクルマのせいではなく、こちらのロケーション設定の問題。ただ、これだけの高性能エンジンを搭載しながら、停止状態からアクセルをベタ踏みしてもホイールスピンなしでスッと走り出してしまうあたり、前・後輪駆動のクルマだったらありえないわけで、エンジンの力を余すところなく受け止めて路面に伝えるだけでも、このクルマが4駆である意味はあると感じた。
自動運転技術の片鱗を味わえるアイサイト
自動ブレーキ、一般路でも使えるクルーズコントロール、車線保持、いずれも非常にレベルが高く、実用性抜群。すべてONにして走っていると、自動運転技術の片鱗を見る思いがする。渋滞路では本当に楽をさせてもらった。願わくば、フットブレーキのホールド機能があると完璧だった。それと、クルーズコントロールの速度設定上限が114キロなのは(以下自粛)。
実用性と運転の楽しさを高次元で両立させる欲張りクルマ
オールマイティに使えて、しかもすこぶる速い。アウトドア、家族サービス、気ままなぼっち旅、ドライブデートに峠攻め…一台でいろんな用途に使いたいし、運転も楽しみたいというユーザーにはうってつけの一台と言える。様々な角度から見てきたが、どこを切り取ってもポテンシャルが高いから、どんな使い方でも満足度が高いだろう。これで350万円は安いと思う。性能やコンセプトがよく似たクルマにフォルクスワーゲンのゴルフRヴァリアントがあるが、あちらは200万以上高い。しかもエンジンはレヴォーグの方がハイパワーで、後席も広い。かなりお買い得である。ただ、燃費は良くないから、経済性重視で動力性能はそこそこでいいということなら、1.6リッター版を選ぶといい。税込270万円台から選べてガソリンがレギュラー仕様なのでお財布に優しい。(文・カメラ 小島純一)
■基本スペック
スバル レヴォーグ 2.0GTS アイサイト
全長/全幅/全高(m) 4.69/1.78/1.49
ホイールベース 2.65m
車両重量 1,560kg
乗車定員 5名
エンジン 水平対向4気筒DOHC16バルブ デュアルAVCS直噴ターボDIT
総排気量 1.998L
駆動方式 4(全)輪駆動
燃料タンク容量 60L
最高出力 221kW(300馬力)/5,600rpm
最大トルク 400N・m(40.8kgf・m)/2000~4000rpm
JC08モード燃費 13.2km/L
車両本体価格 356.4万円
関連記事