PHEVって楽しい! 三菱アウトランダーで行く「電気オンリー」のアウトドア
試乗インプレ「PHEVって聞いたことはあるけれど…イマイチよく知らない。面白いの?」。今週の試乗インプレは、そんなあなたにとって目から鱗が落ちるような情報が想像以上に詰まっているかもしれない。ひょっとすると、あなたのライフスタイルを変えるきっかけになるかもしれない。なぜなら、これまでPHEVにさほど関心のなかった筆者でも、今回の試乗を通してPHEVでしか味わえない生活や楽しさを発見してしまったからだ。三菱自動車の「アウトランダーPHEV」をドライブして体験した“新しいカーライフ”をぜひ紹介したい。(文・カメラ 大竹信生)
PHEVとは?
今回試乗した三菱自動車のSUV「アウトランダー」は、PHEVとガソリン車の2タイプをラインアップしている。PHEVとは「プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ヴィークル」の略。電気を意味するエレクトリックの「E」を外してPHVと呼ばれることも多い。仕組みを簡単に言うと、外部電源からプラグを通して駆動用バッテリーに直接充電できるハイブリッドカー(HV)だ。HVは基本的にエンジンとモーターを効率よく組み合わせて走るエコカー。アウトランダーは、2つの電気モーターを車体の前後に1機ずつ、2リッターのガソリンエンジンをフロントに1つ搭載している。PHEVは、このモーターを動かすのに必要な電気を、自宅のコンセントや全国の充電スポットから直接取り込むことができるクルマというわけだ。
イマイチからイケメンに
アウトランダーの注目ポイントや走行パフォーマンスを語る前に、ちょっと触れておきたいことがある。現在が2代目となるアウトランダーは2012年10月に発売されたが、これがかなりの販売不振にあえいだようで、昨年6月にマイナーチェンジを実施した。
一番目立つ変更点は何と言ってもエクステリアだ。初代がきれいにまとまったデザインだったこともあり、2代目が登場した時は筆者も正直がっかりした。全体的にシャープさに欠けるのっぺり顔で、子供のころから見てきたパジェロやランエボといったハッキリ顔の“三菱らしさ”は欠片もなかったのだ。それが今回、大掛かりなフェイスリフトを施すことでかなり精悍さを増した。皆さんも、見た目を我慢してまで自動車を買いたいとは思わないだろう。どうせなら「カッコいいじゃん!」と思わず笑顔になるクルマに乗りたいはずだ。
そんな紆余曲折を経て“イケメン”に変身したアウトランダーをいざ走らせてみた。発進した時の第一印象は「めちゃくちゃ静か」。モーターがスイーッと滑らかに立ち上がり、「ひょっとして浮いている?」と感じてしまうほどスムーズな出足だ。
アウトランダーのここがスゴイ
このクルマはパワートレインに関して2つの大きな特徴がある。1つ目は「ツインモーター4WD」を世界で初めて採用していること。前輪と後輪をそれぞれ独立したモーターが駆動することで、より細かい四輪制御を実現した。モーターはともに60kW(82馬力)と高出力なので、初動はもちろん加速も力強さと余裕がある。
2つ目の特徴は、走行時の駆動力としてほぼモーターしか使わないということだ。要は電気自動車(EV)なのだ。バッテリー残量が少ない時や高速道で加速した時など「ガソリンも使用した方が効率が良い」とクルマが判断すれば、エンジンを併用したハイブリッド走行に切り替わるが、負担がかかる運転をしない限りEV走行を続ける。
手元のスイッチを使って、ドライバーの意思でバッテリーをコントロールすることも可能だ。乗車中にバッテリーを充電したい時や、現時点のバッテリー残量を温存したい場合は、なんとエンジンで発電した電力を使って走ることができる。そう、アウトランダーのエンジンは「発電機」としての機能も持つ優れモノなのだ。
HVは走行時の状況に応じてエンジンとモーターが互いにアシストする仕組みが主流で、トヨタの「プリウスPHV」もこのタイプに当てはまる。では、なぜアウトランダーはモーターのみで走行できるのか。これを可能にしているのが、総電力量12kWhを誇る駆動バッテリーだ。プリウスPHVの4.4kWh(今秋発売予定の新型プリウスPHVでも8.8kWh)と比較してかなり大容量なのがわかる。マイナーチェンジで向上したモーター効率や燃料消費率も特筆すべきポイント。ハイブリッド燃料消費率は約20キロ/リットル、満充電からのEV走行距離は60キロを実現したという。状況に応じてEVとハイブリッドを使い分けることで、さらに走行距離を伸ばすことができる。これがPHVに「E」を加えてPHEV(=充電できる「電気自動車」)をアピールする理由だろう。
優れた走行パフォーマンス
アウトランダーのモーター走行はスピードを上げても静粛性が驚くほど高い。滑らかで力強い加速感やレスポンスの高さには正直驚いた。車重1880キロのミドルサイズSUVを軽々と動かす力があるのだ。エンジンをメーンの動力源にして走っても、あまりノイズは聞こえない。吸音材や遮音材も向上しているので、モーター走行とエンジン走行が切り替わった時にさほど違和感がないのだ。
ハンドリングもピンポイントの鋭さはないが、ドライバーの要求にしっかりと応える操舵性がある。全高1710ミリと背は高いが、バッテリーを車体中央部に搭載しているので、重心が低く操縦安定性も抜群。高速走行時も不安は一切ない。サスペンション性能やボディ剛性もかなり高いレベルに仕上がっており、シートも程よいサポート力があるので、長時間ドライブも苦にならない。シートポジションが高いので視界は良好。ヘッドクリアランスやレッグスペースはかなり余裕があって、車内はすこぶる快適だ。
アウトランダー最大の魅力
さて、このクルマの最大の魅力は何と言っても「外出先で気軽に電気が使える」ということ。バッテリーの電気を使って様々なアウトドア・アクティビティが楽しめちゃうのだ。給電機能を持ったクルマはほかにもあるが、アウトランダーの最大出力は1500Wという大電力。ほかのクルマはオプションで100V電源を付けても、出力はせいぜい100W。これでは携帯電話やゲーム機を充電することしかできない。逆に1500Wもあれば、パソコンや電子レンジ、冷蔵庫やヘアドライヤーなどなんでも使うことができる。これまでのクルマの概念を変える大エネルギーだ。
だったら実際に大電力を使ってみよう!ということで、「電気しか使わないアウトドア」を試してみた。電気調理器具や食材、テーブルやチェアを積み込んで富士五湖へいざ出発。途中、談合坂SAで充電しようとしたが、2基ある充電スタンドはすでに日産リーフとi-MiEVが使っており、その後ろには初期型の2代目アウトランダーが待機中。この辺のインフラはまだまだ不便さを感じた。ちなみにアウトランダーは、30分の急速充電で約80%までバッテリーをチャージできる。
中央道をひたすら走って河口湖インターで下りたのだが、前日までのぽかぽか陽気がまるで嘘のように、パラパラと雪が降ってきた。これはまずい。広報車を予約した時は降雪など全く予想していなかったので、「スタッドレスですか? もう必要ないと思います」と三菱自動車さんのオファーを断っていたのだ。「雪が強くなって路面に積もり始めたら残念だけど帰ろう」-。スピードを落として慎重に目的地を目指した。
電気を使ってレジャーを満喫
何とか湖までたどり着いたので、湖岸にクルマを下して外に出てみる。「チョー寒い!」。たくさんのアウトドア用品を積んできたが、仕事じゃなければすぐにでも引き返すレベルだ。2月のウェイクのロケに続いて眼前の富士山が全く見えない。ノルウェー人の友達が持っていた日本のガイドブックに「Mt. Fuji is extremely shy(富士山はなかなか姿を見せてくれない)」と書いてあったことを思い出す。
それでも目の前に広がる湖と雪化粧した山々がとてもきれいで心を癒してくれる。テーブルとチェアを組み立てて電気ケトルを用意し、アウトランダーの電源につないでお湯を沸かす。あえて大自然の中でやることにやや違和感があるが、ここで淹れるコーヒーが美味しくてとても温かい。「こういうのもイイね」とちょっとした幸福感を覚える。
次は料理だ。IHクッカーを使って、鱈とニンニクをオリーブオイルで軽くソテーしていく。付け合せも準備。鱈が出来上がったらお皿に盛りつけてケーパーをまぶし、少量のバルサミコ酢を振る。言い忘れたが、料理中もしんしんと雪が降っている。「オレ、何をやっているんだ…」。料理が美味しく出来上がったのはいいのだが、とにかく冷めるのが早い!メーターで気温を確認したらなんと0度。そりゃ周りの人が物珍しそうにこっちを見るわけだ。
ちょっと気になったのでクルマの電気残量を確認したが、全く減っている様子はない。これなら余裕だ。最後は電気鍋を出してチーズフォンデュを作る。めちゃくちゃ寒いとはいえ、都会の喧騒から離れて外でフォンデュを食べるなんてなんて贅沢。最後に締めのコーヒーをもう一杯。これをすべて電気のみで楽しんでいることに新鮮さを感じる。
電気を使うメリット
電気を使ってアウトドアで料理をするメリットとはなんだろうか。まずはいろんな手間が省けることで、労力や時間を節約できることだ。炭火を起こすよりも早く調理に取り掛かれるし、消す時もボタンを一押しすれば済む。ガスのようにボンベが切れる心配もない。家庭で使い慣れた家電をそのまま使えるので、アウトドアがより身近になるだろう。
自然への影響も最小限に抑えることができる。まず、発電から充電までのCO2排出量は別として、電気は現地で使う分にはとてもクリーンなエネルギー。昔からバーベキューのあとに炭を捨てていく人がいるが、炭は分解しないので少なからず環境や生態系への影響はある。もちろんしっかりとマナーを守っている人が多いのは重々承知。家電ならその場を汚さないし消火も不要なので、後片付けだって楽チン。もちろん火事の心配もない(!)。まあ、苦労が少ない分、電気のアウトドアじゃ物足りない!といった意見もありそうだが…。
もちろんPHEVなら “オール電化”のキャンプだってできる。炊飯器や電子レンジも使える。サーフィンや釣り、サイクリングなどこれまでのレジャーに電気を持ち込むこともできるのだ。様々な形のアウトドアがあってやり方は人それぞれだが、いろんな人にとって新たなチョイスが増えたことは間違いない。電気がぴたりとハマる人には、PHEVは素晴らしい相棒になりえるのだ。
駆動用バッテリーは災害時の非常用電源としても活躍する。一般家庭で最大10日分の電力がまかなえるそうだ。そういえば筆者が住んでいる東京都武蔵野市は2014年7月24日に、落雷で長時間にわたって停電した。真夏の停電でとくに冷凍庫の中はプチパニック状態。「あの時PHEVがあれば…」などと思ったが、よーく考えたらマンションの部屋まで届くほど長い電源コードがなかった…!
三菱自動車によると、マイチェン後の販売ペースは初期型と比較して伸びているそうだ。見事に進化したアウトランダーPHEVにはいろんなことを考えさせられた。間違いなく、自動車ユーザーに新たな価値創造を提供してくれる革新的な一台だった。(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)
■主なスペック(Gプレミアム・パッケージ)
全長×全幅×全高(ミリ):4695×1800×1710
ホイールベース(ミリ):2670
車両総重量(キロ):1880
◇モーター
形式:S61/Y61(前/後)
定格出力:25kW(前/後)
最高出力:60kW(82ps)(前/後)
最大トルク:137Nm(14.0kgm)/195Nm(19.9kgm)(前/後)
◇駆動用バッテリー
種類:リチウムイオン電池
総電圧:300V
総電力量:12kWh
◇エンジン
エンジン:DOHC16バルブ4気筒
総排気量(リットル):1.998
最高出力:87kW(118ps)/4500rpm
最大トルク:186Nm(19.0kgm)/4500rpm
タイヤサイズ:225/55R18
乗車定員:5名
車両本体価格:459万円(税込み)
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