キビキビ、そしてしっとり… ミニ クーパーS クラブマン(前編)
試乗インプレ言わずと知れたBMWミニ。すっかり大きくなって、「もうミニじゃない」と陰口を叩かれつつも順調にモデルチェンジを重ね、ベースモデルは現行で3代目を数える。4ドアモデルからコンパーチブル、コンパクトSUVの「クロスオーバー」まで、派生車種も続々登場し、ミニに乗りたいけど、2ドアの前輪駆動だけでは…と購入を躊躇していた潜在購買層を貪欲に飲み込み続けている。今回はそれら派生車種の中から、ホイールベースを延長し4ドア仕立てで快適な後席スペースと広い荷室を確保したクラブマンに試乗した。(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)
ついついアクセルを踏み込ませるゴキゲンサウンド
いつもの通り渋滞路を含む市街地、高速道路、山坂道の3パターンで試走。山坂道は、東京・青梅から奥多摩湖を経由し山梨に至る国道411号線を走ってきた。
試乗車はクーパーSという中堅のスポーティーグレードで、ターボ付きの2リッター4気筒エンジンを搭載。結論から言うと、カタログ数値どおりパワフルかつトルクフルでクーパーSの名に恥じない心臓である。発進、加速、巡行のいずれの場面でも全く不足を感じない。むしろ普通に走る分には下位グレードに搭載されている1.5リッターの3気筒で十分では…とすら思えた。
BMWが作ったエンジンらしく、ゴキゲンなサウンドに背中を押され、ついついアクセルを踏み込んでしまう。このあたりはBMWのX1に試乗した時に感じた高揚感とよく似ている。
旋回はキビキビと、直進巡行はしっとり大人っぽく
ノーマル、エコ、スポーツと3つのドライブモードを備え、状況に応じて出力特性を切り替えることで、走りの良さと乗り心地の両立を図っている。運転していてはっきりと違いがわかるのはやはりスポーツモード。高回転を維持するシフトプログラムとなり、アクセル操作に対するレスポンスも鋭くなる。
ゴーカートフィーリングと言われるミニ独特のハンドリングは、クラブマンでも健在だ。走行モードをスポーツに切り替え、峠道をハイペースで駆け抜けると、ハンドル操作にキビキビ反応し、意のままに旋回していく爽快感を味わえる。ただ、ベースモデルのミニよりもホイールベースが長い分、思ったよりも挙動は穏やか。「大人のためのミニ」というメーカーがこのクルマに与えたキャラクターが、走りにも表れていると感じた。
その走りの大人っぽさは実は高速道路での巡行や街乗りで存分に発揮される。ノーマル、またはエコモードで走れば、低速からしっかりトルクのあるエンジンと、こまめにシフトアップする多段8速ATのおかげで、低回転を維持したまま流すことができるから、車内は意外なほど静か。加えて、長いホイールベースが、運転疲れを軽減する直進安定性と良好な乗り心地にも一役買っている。
ミニクーパーと言えば、ボーイズレーサーの象徴のようなブランドだが、ことクラブマンにあっては、その素性を持ちつつ、大人っぽく、しっとりと走ることも得意な二面性を持ったモデルという印象を強く持った。
スポーツ性を削ぐ標準タイヤ
残念に感じたのは、標準装備のタイヤ。ピレリのチンチュラートP7というコンフォート系タイヤで、私自身も自分のクルマで使用経験があるのだが、静粛性、快適性が非常に高い反面、スポーツ走行での限界は高くない。今回も峠道のカーブで、何度となくタイヤが鳴く場面があり、想定よりもやや低めのペースで走らざるを得なかった。私程度の素人ドライバーでもこうなのだから、スポーツ走行にこだわりのあるユーザーでは不満が出るだろう。
メーカー広報によれば、オプションでもスポーツ系タイヤは選べないとのことだが、せめてクーパーの名のつくシリーズでは選べるようにするか、ブリヂストンのポテンザS001のようなセミスポーツタイヤを標準に設定してほしいと思った。
BMWにもフィードバックされたFF技術の熟成
日没後まで一日じっくり走り込んで感じたのは、ボディ剛性、密閉性の高さ。さすがのBMW製、コンパクトカーだからと言って抜かりはない。走り味も含めて、欧州高級車のDNAが惜しみなくつぎ込まれたことが端々から伝わってくる仕上がりだ。ずっと後輪駆動(FR)にこだわっていたBMWが、一昨年にアクティブツアラー、昨年はグランツアラーと立て続けに前輪駆動車(FF)2車種を発売したことが大きな話題になったが、ミニで培った小排気量FF車のノウハウが、これら本家の車種にフィードバックされていることからも、その技術の熟成度はうかがい知れる。
「もうミニじゃない」との揶揄は、単に肥大化したボディを指しているだけではないことがよくわかった。たしかに、これは英国のオースチン、ローバーが作っていたオリジナルのミニとは全くの別物だ。では、BMWミニには魅力がないのか、というと、それもまた違うと思う。その魅力の本質は、内外装のディテールに隠されていた…。(文・カメラ 小島純一)
次回は後編「円のモチーフにこだわりまくった内外装」を掲載します。
■基本スペック
ミニ クーパーS クラブマン 8AT
全長/全幅/全高(m) 4.27/1.8/1.47
ホイールベース 2.67m
車両重量 1,470kg
乗車定員 5名
エンジン DOHC直列4気筒ターボチャージャー付き
総排気量 1,998L
駆動方式 前輪駆動
燃料タンク容量 48L
最高出力 141kW(192馬力)/5,000rpm
最大トルク 280N・m(28.6kgf・m)/1,250~4,600rpm
JC08モード燃費 16.6km/L
車両本体価格 384万円
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