買い得感いっぱい、走りもガソリン車以上 トヨタ・C-HRハイブリッド(後編)

試乗インプレ
テールが絞り込まれたシャープなデザインだが居住スペースは狭くなる

 トヨタの世界戦略を担って昨年12月に発売された「C-HR」。トヨタの狙い通りか、意外なヒットか…、発売わずかひと月で、5万台を受注する人気ぶりで、4月にはついにSUV初となる新車販売台数トップを記録した。(文・写真 土井繁孝/産経新聞大阪本社写真報道局)

 前編でお約束した通り後編では、ハイブリッド仕様の走りを紹介する。

 「C-HR」は1.8リッターのハイブリッド(FF)と1.2リッターターボ(4WD)の2種類だが受注の8割近くをハイブリッドが占める。なによりハイブリッドは燃費が30.2キロで、1.2リッターの15.4キロのほぼ倍。おまけに0-100キロの加速データも、ハイブリッドのほうがわずかに速いという。

 とどめは価格差で高級志向のGグレードで、290万円と277万円と、その差はわずか13万円。四駆が必要なければハイブリッドを選ぶのもうなずける。

 試乗したのは、ハイブリッドの「G」(290万5200円)で最上級モデル。ボディーカラーの「メタルストリームメタリック」が「C-HR」の立体感あるデザインにさらに深みをあたえる。光の映り込みによってクルマの表情がさまざまに変化する。

 本革とキルティング地を使った高級感のあるシートに座る。見通しはよく、ヘッドクリアランスも十分で身長188センチの筆者でも余裕がある。運転席は適度にタイトで、シートやステアリングの可動域も広く、ドライビングポジションで苦労することはない。

 スタートボタンを押して、走り出す。出足は少しパワー不足かなと思ったが、スピードが乗るとよく走る。というか、最近の国産車は、本当によくできている。運転に問題のあるクルマを探す方が難しく、一般道を普通に走るなら、どの車種を選んでも後悔することはないだろう。

 そうなるとクルマ選びの基準は、値段や燃費、そしてボディーの形になってくる。値段は予算が決まっているので、その枠から候補を選んでいけばいい。燃費ならEVも候補に挙がるが、まだ普及途上で、ハイブリッドに分がある。そんなこんなで車種を絞っていくと、やはり「C-HR」は魅力的な存在だ。

 値段はやや高いがプリウスとそれほど変わらない。ちなみに「プリウス」のSグレードは約248万円からで、「C-HR」のSグレードが264万円。差額が16万円なら、少しがんばれば「C-HR」に手が届く。

 燃費はハイブリッドを選べば問題なし。そして、トヨタらしからぬ尖ったデザイン。マイカー候補の最右翼に上がるだろう。

 ハイブリッドならタイヤは18インチで、見た目もスポーティー。足回りもしっかりしており、サスペンションのストロークもやや堅めだがSUVらしい乗り味だ。

 なぜか車重もハイブリッドの方が30キロほど軽い。後席にバッテリーを積むので、前後の重量配分もバランスがよくなっている。そのせいかタイトコーナーでもややアンダーの姿勢を保ったまま素直にインが入り、いやな動きを感じない。

 街中の走行ならモーターを使う場面が多く、車内は静か。エンジンが始動しても、遮音が優秀で、騒々しさを感じない。

 クルーズコントロールも標準で設定されており、高速道路の長距離ドライブも楽ちんだ。

 インテリアの質感もプリウスより上質。エクステリアデザインの原点となった「ダイヤモンドシェイプ」を取り入れた。ドアトリムや天井、ラゲージのすべり止めなどに、ダイヤをかたどったアクセントがちりばめられる。

 弱点といえばデザイン優先のためか、後方の視界が悪いこと。バックするときに車両感覚がつかみにくい。全グレードオプション接待になるが、バックモニターは必ず装着したい。

 優等生だがおもしろみに欠けるといわれるトヨタ車が新しいステージに挑む「C-HR」。かっこいいエクステリアに、質感の高いインテリア。そして走りは、街中から高速道路、そしてワインディングまで、ステージを選ばずスポーティーな走りが楽しめる。トヨタの意欲作「C-HR」。しばらくは納車待ちの状況が続きそうだ。(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)