複数の扉をくぐって向かったのは、アクアトンネルの中にある緊急避難通路。ここは高速道路の真下にある通路で、筒状のトンネルを「自動車専用道路」と「緊急避難通路」に上下で分けた構造となっている。2層で構成されたトンネルの外壁は厚さ1メートル。避難通路の中は電気が通っていてそれなりに明るい。万が一、海底トンネル内で交通事故や火災が起きたときは、この避難通路に逃げ込めるようになっている。先ほど、絶えずドスン、ドスンと音がしていたのは、我々の頭上を無数の自動車が時速80キロ近いスピードで走っていたためだ。
どうやって避難するの?
意外だったのは、事故が起きたときに避難する方法だ。実は道路脇に300メートル間隔で避難口扉が設置してあり、そこからすべり台のような避難用スロープを降りて道路下の避難通路に逃げるのだ。ガイドによると「人は押す習性があるため、ケガをしないようにすべり台にしました」と説明してくれた。このような避難経路はアクアトンネル内に66カ所も設置してあるという。避難通路に降りると150メートル間隔で非常電話が置いてあり、受話器を外すだけで埼玉県の道路管制センターにつながるそうだ。避難通路には消防車や救急車などの緊急車両も入ることができるように設計されている。
避難通路にはフワーッと柔らかい風が吹いていて、ややひんやりとしている。トンネル内に煙がこもらないよう意図的に風を通して換気しているのだ。さらには通路内の気圧を高めることで、トンネル内の煙が避難通路に降りてこない仕組みになっているのだという。アクアトンネルの最深部は海面下60メートル。実はその真上に浮かぶ人工島「風の塔」が、排気ガスと新鮮な空気の換気を行っている。