しかもこのクルコン、加速時のアクセルワークがうまい。CVTが無駄に回転数を上げず、エンジンのおいしいところを使って高燃費を維持しつつ、もたつきなく加速していくではないか。同じく自動減速の制御も見事で、まったく危なげなく思った通りにスムースにブレーキをかけてくれる。逆に、クルコンの癖をまねることでCVTの違和感を抑えながら運転できるようになるかもしれない、なんて思わされたほどだ。
ディーラー試乗で試しにくい隠れた美点
残念ながら、N-BOXのACCは時速30キロ以上でしか作動しないため、渋滞時や一般道では使いづらいのだが、そもそも非搭載の軽、小型車に対しては大きなアドバンテージである。
長距離ツーリングの機会が多いユーザーにとっては、これだけで大きな購入動機になるし、長距離運転の負荷が軽減されることで余暇の行動範囲が広がり、ユーザーのライフスタイルに影響を与える可能性すら秘めていると思う。ディーラーでの試乗ではACCを試すことは難しいだろうが、走りに関するこのクルマの隠れた美点である。
ACC機能実現に必要かつ高価な部品であるミリ波レーダーを標準で装備した判断には、自動運転時代を見据え、今後低い価格帯の軽でも自動運転化を進めていく、というホンダの戦略が透けて見える。
「軽」の水準超え、質を語れる走り
総じて新型の走りは、「軽」というカテゴリーから想像できるレベルを大きく超えているのみならず、質を語れる領域に達している。特に、静粛性と足回りの仕上がりは格上の1~1.3リッタークラスの小型車、たとえば私が試乗を担当したダイハツ・トールよりも明らかに良かった。しかも、130万円台のベースグレードにさえもれなくACC装備、という贅沢なおまけ付き。走りだけ見ても、軽自動車を含めたスモールカーの基準をも塗り替え得る中身を備えている。この出来栄えに競合他社も戦々恐々、いや逆に奮起しているかもしれないが、ホンダ自身の格上小型車をも食ってしまうのではないか、と他人事ながら心配になるほどだ。
次週・後編はスーパーハイト系ならではの多彩なシートアレンジをはじめとする内外装のインプレッションを、写真増量でお届けする。(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)
■基本スペック
ホンダ・N-BOX カスタム
全長/全幅/全高(m) 3.395/1.475/1.79
ホイールベース 2.52m
車両重量 930kg
乗車定員 4名
エンジン 直列3気筒
総排気量 0.658L
変速装置 CVT
駆動方式 前輪駆動
燃料タンク容量 27L
最高出力 43kW(58馬力)/7,300rpm
最大トルク 65N・m(6.6kgf・m)/4,800rpm
JC08モード燃費 27km/L
車両本体価格 175.284万円