「室内が狭くてイヤですか。ならばEクラスを買ってください」
開発担当者の言葉は明快だ。Eクラスという大ヒット作をラインナップしているからできる挑戦だったともいえるが、その潔さが成功に導いたのだと思う。
2003年のCLSデビューは、世界を驚かせた。同時にあらたな市場を切り開くことになった。その後、アウディは4ドアクーペたるA7を送り出し、BMWは4シリーズと6シリーズに、やはりスタイルを優先したグランクーペを加えた。
◆4ドアクーペのトレンドセッターに
性能だけでなくオシャレでありたいという流れはSUVにまで波及し、BMWはX系の偶数車に、つまり、X4やX6といった、クーペスタイルのSUVを送り込むまでに市場を開拓したのである。まさに、CLSは、4ドアクーペのセグメントを創出したトレンドセッターといっていい。
そんな成功を収めたCLSは、新型になってもスタイルに対しての妥協がない。デザインの基本思想を「Sensual Purity(官能的純粋)」としている。フロントエンジンは、人が顎を引き、前方に鋭い視線を送るかのような攻撃的なフォルムとした。サイドビューがCLSのアイデンティティーでもあるアーチ形状のラインを描くのは当然のことだ。
フロントウインドーの付け根からフロントタイヤまでの距離が長いのも特徴だ。これによって、いわゆるスポーツーカーの基本形であるロングノーズ感覚を強調させているのだ。ウエストラインが高いのも伝統的なデザインである。一方ルーフは低いから、重心が低く見える。まさにスポーティーカーらしさを盛り込んでいるのである。