原油安、個人消費を下支え ガソリン100円割れ、電気・ガス料金下落加速
原油安が家計にもたらす恩恵が広がってきた。事業者の競争激化もあり、ガソリン価格が100円割れになる給油所が各地で登場。電気・ガス料金も下落が加速している。燃料価格に応じた航空運賃の上乗せ分は4月から6年半ぶりにゼロになる見込みで、個人消費の下支え効果が期待されている。
レギュラーガソリンが1リットル当たり100円を切る給油所が目立ち、全国有数の「激安地帯」となっている香川県坂出市。油槽所が近いため輸送コストが少ないことに加え、格安業者の参入で競争が過熱している。
「同じ価格では大手に勝てない。1円でも安くしないと」。セルフ式の給油所を先月、坂出市にオープンした「日商有田」(和歌山県有田市)の垣本智史社長(38)は意気込む。市場で余ったガソリンを買い集めている商社から調達してコストを抑えており、一時は93円まで値下げした。
この給油所を訪れた坂出市在住の三谷一恵さん(65)は「驚くほど安い。車は絶対に使うものなので助かります」と笑顔で話した。
2月1日時点のガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は、113円40銭と6年10カ月ぶりの安値になり、2008年に記録した過去最高価格からは約70円下がった。地域差も大きく、埼玉県や高知県が108円だった一方、鹿児島県は123円となった。
価格を比較する民間の情報サイトによると、岩手、茨城、三重、愛媛、沖縄の各県などで100円を切る給油所が出現した。製油所が減っている地域は輸送費がかさんで価格が割高になるが、量販店などが安売り攻勢をかける地域では値下がりが加速している。
灯油も18リットル当たり1112円となり、08年のピークから約1270円下がった。灯油を多く使う寒冷地では家計のメリットが大きい。
原油に連動して決まる電気・ガス料金も低下が続く。大手の電力10社とガス4社はいずれも、今年2月と3月の料金を引き下げた。東京電力の場合、3月は7315円とピークから1200円以上値下がりした。
旅行費用も節約できそうだ。航空運賃に上乗せされる国際線の燃油サーチャージは、日本と北米を結ぶ路線で昨年1月発券分が片道2万1000円だったのが、現在は7000円で、4月分から「ゼロになる見通し」(大手航空)。行楽シーズンに追い風となりそうだ。
SMBC日興証券の渡辺浩志シニアエコノミストは「原油安で家計に余裕が出て消費に回れば、景気の浮揚効果がある」と話す。ただ、原油価格は今年半ばから上昇に転じるとの予想もあり「家計の下支えがあるうちに成長戦略を官民で加速し、持続的な賃上げにつなげることが必要だ」と指摘している。
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