不動産、地方都市にも外国人需要 生き残りへ…地域の本気度映し出す鏡に
2016年の公示地価は、札幌や仙台、福岡など地方中枢都市の上昇幅が住宅地、商業地とも三大都市圏(東京、大阪、名古屋)を大きく上回った。牽引(けんいん)役は訪日外国人旅行者の急増に伴う店舗やホテル需要の高まり。観光分野は政策後押し効果も期待されており、成長銘柄として投資マネーを集めている。
「築20年前後くらいの中古別荘が飛ぶように売れている」。世界的なウインタースポーツの中心地となった北海道・ニセコ周辺の不動産業者が打ち明ける。所有者の高齢化などを理由に手放されるバブル期前後の物件を「欧米など外国人が高値で購入していくケースが増えた」という。
住宅地上昇率で全国トップ7を独占した北海道は19年に外資系高級ホテルの開業が計画される倶知安町が上昇率19.7%で1位。都市部の札幌市中央区も5地点が入った。4.8%増の旭川市は「混雑する新千歳空港を避けて旭川空港の利用客が増加した」(国土交通省)とされる。
訪日客効果は三大都市圏にも表れた。地価の最高地点となった東京・銀座や上昇率で全国1、2位となった大阪・ミナミ周辺は百貨店や高級ブランドの路面店が並び、電車やバスで訪れる観光客でごったがえす。大阪府不動産鑑定士協会の関係者は「飲食店などの店舗需要が旺盛で空き店舗も少なく価格上昇につながった」と分析する。
アベノミクス以降の地価底上げは企業の業績回復などを受けた三大都市圏の商業地が牽引してきた。だがオフィス仲介の三鬼商事によると都心5区のオフィス平均空室率は昨夏に5%を切って下落傾向にある一方、平均賃料の伸びは小幅にとどまっており、取得価格に対する利益率は低下傾向にあるという。
こうした中、観光地となっている地方の商業施設やホテルなどへの投資に熱視線が注がれる。日本政策投資銀行の観光投資部門の担当者は「設備投資や経営効率化により、日本のホテルや旅館の収益改善余地は大きい。観光地としての整備が進めば、さらに価値が上乗せされる」と相乗効果の大きさを強調する。
投資の受け皿となるホテル特化型の不動産投資信託(Jリート)やファンド設立なども相次ぐ。13年に星野リゾート・リート投資法人、15年にはいちごホテルリート投資法人が上場。森トラストもホテルリート投資法人の設立を1月に発表した。同社の吉田武副社長は「外資系ホテルへのブランド変更も含め、ホテルや観光地の価値向上を図りたい」と意気込む。
投資家たちが織り込むのは、「観光立国」を掲げる政府の政策支援だ。安倍晋三政権は20年までの年間訪日客数について目標上積みを検討するほか、16年度の関連予算を拡充する。
22日に国交省で開かれた不動産投資市場についての有識者会議でも市場の成長戦略案として、観光など成長分野の投資促進に向けた支援拡充が盛り込まれた。
ただ、観光分野への投資拡大は地方間の“優勝劣敗”をより鮮明にする可能性がある。訪日客効果に沸く北海道でも、稚内市のJR稚内駅周辺は全国の商業地で下落率1位となった。国交省の担当者は「郊外の商業施設などに買い物客を奪われている。訪日客は来ていないだろう」と地域内格差を指摘する。
「同じ観光地にあるホテルでも、収益の見込まれるところに資金が集まる構図になっていく」。不動産開発大手の幹部は新たな二極化の始まりを示唆する。訪日客効果が色濃く出た公示地価は今後、生き残りに向けた地域の本気度を映し出す鏡となりそうだ。
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