日本のラグビーW杯、難題はチケット値決め あと3年半…準備は進んでいるか
【早坂礼子の経済ウオッチング】
昨秋、イングランドで行われたラグビーワールドカップ2015で、日本代表は優勝候補の南アフリカに勝つなど歴史的な成果を挙げた。4年に1度の同大会、次の開催地は日本だ。あと3年半。準備は進んでいるのか。
ラグビーが日本でプレーされるようになったのは明治時代。1980年代には一大ブームになった。2003年には15人制のプロリーグができて、14年には7人制の女子ラグビーシリーズも始まった。日本はワールドカップにも1987年の第1回大会から連続出場し19年大会の誘致に成功した。ラグビーが盛んな欧州や南半球の国ではなく、アジア地域での初開催だ。
「イングランド大会での日本代表選手の活躍でラグビー好きの日本人の遺伝子が呼び覚まされたのではないか」と話すのは日本大会の準備を担当する公益財団法人・ラグビーワールドカップ2019組織委員会の嶋津昭事務総長だ。
「日本のラグビーは130年の歴史がある。社会人や学生ラグビーが繁栄した時期があったから日本人の観客には“ラグビーはおもしろい”と知っている人も多い。世界の一流プレーヤーが集まる競技会を国を挙げて“お祭り”として楽しんでもらえるよう、ラグビー協会と協同でムードを醸成していかなければ」と意気込んでいる。
経済効果は約4200億円?
ラグビーワールドカップは夏季オリンピック、サッカーワールドカップと並ぶ世界3大スポーツ大会のひとつで、経済効果は非常に大きい。さきのイングランド大会では、約247万枚のチケットが売れ、海外から約46万人が観戦に訪れた。試合は210を超す国々でテレビ放映されて約42億人が視聴。総額で約22億ポンド(約4000億円)の効果をもたらしたという。
日本大会は2019年9月20日から11月2日までの約7週間、北海道から九州まで全国12都市のスタジアムで行われる。世界から20チームが参加し、5チームごとに4つのグループに分れて総当たり戦を行い、勝率首位の4チームが決勝トーナメントを戦う。
民間研究機関は日本大会には世界のラグビーファンが約40万人観戦に来日し、イングランド大会をしのぐ4200億円の経済効果を生むと予測する。ワールドカップでは試合と試合の間に原則約1週間の猶予を取ることになっているので、複数の試合を見たい観客は最低2週間、日本に滞在することになる。一般に海外から観戦に渡航するラグビーファンは富裕層が多く、彼らがその間に各地を観光したり、飲食したりすれば自ずと経済効果も膨らむ。
非経済効果も見逃せない。大会期間中は日本文化を発信して国際交流を進めたり、ラグビーの「one for all、all for one(1人はみんなのために、みんなは1人のために)」の精神を老若男女に広める絶好の機会になる。
チケットの値決めが難題
事務局は4月から全国の12会場の整備計画を確認し、来年の半ばには各試合の会場を割り振る。各国代表チームが期間中に練習拠点とするキャンプ地の決定もある。募集要項は今年5月にできるが、40カ所を予定しているところに100カ所以上の自治体から手が挙がっているので絞り込み作業は難航しそうだ。
最大の難題はチケットの値決めだ。開催国は世界のラグビーを統括する「ワールドラグビー」という組織に大会拠出金を払うルールがあって19年は9600万ポンド(約155億円)と定められている。日本はこれを支払ったうえで大会の運営費をチケット収入などで賄わなければならない。
過去の大会ではゴールから遠い席でも日本円換算で10万円を超す高値が付くことも珍しくなかったが、あまりに高値で会場が埋まらなくても困る。チケットが入手出来ない人のために試合の模様を映像で観戦するパブリックビューイベントも実施する計画だが、試合の臨場感はスタジアム観戦ならではだ。嶋津事務総長は「経費がこれだけかかるからと単純割りするわけにはいかない。日本のお客さんがいくらだったら購入してくれるか調べてから設定しないと。専門家の意見も聞きながら設定していく」と話している。
日本大会の成功を確実にするためには、チケット収入以外にも企業の支援などで堅牢な財政基盤を確保する必要がある。本当に海外から観客や40万人も来るのか、日本国内の競技場が地方会場も含め全部満杯になるのか、確証はない。日本でワールドカップを開催する意義や理念をきちんと語らなければファンの支持はもちろん、必要な資金も集まるまい。開催まで3年半を切るなか、時間との闘いが始まっている。
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