物価目標4回目の先送り 日銀総裁「マイナス金利効果見極め」

 

 日銀は28日、金融政策決定会合を開き、2%程度の物価上昇率目標の達成時期について、従来の「2017年度前半ごろ」から「17年度中」に先送りした。円高や消費低迷により物価の上昇基調は鈍っているが、7対2の賛成多数で追加金融緩和は見送った。物価上昇率目標の達成時期の先送りはこれで4回目。デフレ脱却が一段と遠のいたにもかかわらず追加緩和は見送ったことに失望した金融市場では円高が加速、日経平均株価は急落して節目の1万7000円を割り込んだ。

 黒田東彦総裁は決定会合後の記者会見で、追加緩和を見送った理由を「(2月に導入した)マイナス金利の政策効果の浸透を見極めるのが適当と判断した」と説明した。効果が表れるまで「半年も1年もかかるものではない」と述べ、マイナス金利政策による金利低下がいずれ実体経済や物価を押し上げると強調した。

 日銀は同日公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、16年度の物価上昇率の見通しを前回1月の0.8%から0.5%に、17年度は1.8%から1.7%に下方修正。原油安が長引いていることに加え、今春闘での賃上げが日銀の想定よりも小幅にとどまりそうなことを反映させた。景気の現状判断は「基調としては緩やかな回復を続けている」で据え置いた。

 一方、日銀は熊本地震の被災地に営業拠点を持つ金融機関に対し、年0%の金利で資金供給する支援制度を適用することを決めた。