「世界経済が最大のテーマだ」「北方四島の解決に向け会談したい」
欧州訪問・安倍首相会見詳報(上)【ロンドン=峯匡孝】安倍晋三首相は5日夜(現地時間同日午後)、訪問先の英ロンドンで記者会見し、「世界経済の下方リスクと脆弱性が高まっている。こうしたリスクに先進7カ国(G7)がいかにして協調して立ち向かうことができるかが主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の最大のテーマだ」と述べた。記者会見の詳細は以下の通り。
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「本日5月5日は日本では、子供たちの健やかな成長を願う国民の祝日であります。次の世代を担う子供たちのためにより良い世界を築く、これは政治家たるものの共通の務めであります。そして、世界中のどの国のリーダーもその決意は変わらないと信じます。3週間後に日本の伊勢志摩で開催するG7サミットはその決意を行動へと移す、世界が直面するさまざまな課題に力を合わせて立ち向かう、大きな一歩を踏み出す場にしたいと考えています。自由、民主主義、人権、法の支配とった基本的な価値を共有し、世界の平和と繁栄を牽引してきたG7にはその大きな責任があります。先ほど会談を行ったキャメロン首相ともフランスのオランド大統領やイタリアのレンツィ首相とも、さらにはドイツのメルケル首相ともその使命感と責任感を共有できたことは今回の欧州訪問の大きな収穫でありました」
「首脳たちからは先月の熊本地震について犠牲となった方々への哀悼の意と被災された方々へのお見舞いの言葉をいただきました。この5月5日を自宅を失って残念ながら避難した体育館の中で迎えた子供たちがたくさんいます。しかし先週訪れた避難所では不自由な生活の中にあっても笑顔を絶やさず励まし合い助け合いながら復興に向けて頑張る被災者の皆さんがいました。その思いに応えるため政府も現在、復興対策に全力を挙げているところです。被災地である九州の熊本や大分は日本が世界に誇る観光地であります。今回も日本の投資先としての魅力、観光地としての魅力を各首脳に目いっぱいアピールしました」
「ベルギーでは神戸市の久元市長やつくば市の市原市長の参加を得て日本の地方が持つ魅力を発信いたしました。どうかヨーロッパの皆さんも今年の夏休みには日本に、そして九州にお越しいただきたい。豊かな自然や温泉を満喫していただきたいと思います。力強く復興が進む姿をその目で確かめていただければ大変うれしく思います。あらためてこの場を借りてヨーロッパをはじめ世界中から寄せられた被災地へのエール、心温まる支援の数々に対して心からのお礼を申し上げたいと思います。国境を越えた絆は被災地の人々を大いに勇気づける大きな力となっています」
「これほどまでに相互依存が高まった世界にあって今日私たちは自然災害をはじめとしてさまざまなリスクを共有し、ともに立ち向かわなければならない、そうした時代を迎えています。ベルギーではあの非道なテロが行われた現場に足を運び、犠牲者のご冥福をお祈りし献花をいたしました。暴力的過激主義は世界の平和と安定に大きな脅威となっています。中東から欧州へと押し寄せている難民への対応も政治問題であるだけでなく世界経済にも大きな影響を及ぼす課題であります」
「こうしたリスクの高まりに加えて、昨今の原油価格の下落は資源国をはじめ新興国の経済に大きな打撃を与えています。さらに過剰設備や不良債権の問題が指摘されるなど中国の景気減速への懸念も背景に年明け以降、世界的に市場が大きく変動しており、世界経済の不透明さが増しています。世界経済の下方リスクと脆弱性が高まっている。こうしたリスクにG7がいかにして協調して立ち向かうことができるかが伊勢志摩サミットの最大のテーマであります。G7がリードして、世界経済の持続的かつ力強い成長への道筋を示す政策協調への力強いメッセージを打ち出さなければなりません」
「なすべきことは明確です。アベノミクスの3本の矢をもう一度世界レベルで展開させることです。自由な競争の中から新しい技術革新が生まれ、そして新しい付加価値が生まれます。構造改革を推し進め、良いものは良いと評価される、自由で公正な市場をつくらなければなりません。そのためにも日本はTPPや日EUEPAの実現を急いでいます。多くの専門家は今年、さらなる景気悪化と、世界的な需要の低迷を見込んでいます。安定した成長軌道を目指し、この低迷した状況から一気呵成に抜け出す、脱出速度を上げていくためには、金融政策だけでなく、財政政策においても、機動的な対応が強く求められています。新興国を中心に質の高いインフラや環境分野での投資を一層拡大していくことも必要です」
「イギリスを代表する保守政治家、チャーチル首相の言葉がよみがえります。『行動を起こすことを私は全く恐れない。恐れるのはただ無為に時を過ごすことだけだ』-世界経済が抱えているリスクが顕在化し、危機に陥るその前に、私たちは行動を起こさなければなりません。私たちG7にいま求められていることは、行動であります。1カ月ほど前、ワシントンでオバマ大統領やカナダのトルドー首相と一致したこの認識を今回、ヨーロッパの友人たちとも共にすることができたと考えています」
「明日、私はロシアを訪問します。ロシアともまた、世界が直面するさまざまな課題に立ち向かう関係を築きたい。ウクライナ問題においても、シリア情勢また北朝鮮の問題においても、その解決のためにはロシアの建設的な関与が不可欠であります。幅広いテーマについて、プーチン大統領と話す、話し合う予定であります」
「日露間では戦後70年以上を経た今も平和条約が締結されていないという異常な状態にあります。プーチン大統領との首脳会談は、今回で13回目となりますが、この問題は首脳どうしの直接のやり取りなくして、解決することはできません。北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結する、その共通の目標に向かって、胸襟を開いて率直な会談を行いたいと考えています。隣国である日本とロシアの両国民は、長い歴史の中で深い友情を培ってきました。現在の異常な状態を解消し、経済分野をはじめ、日露の協力が秘めている大きな可能性を現実のものとする、その道筋について、プーチン大統領と話し合いたいと思います。私からは以上であります」
(続く)
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