GDP年1.7%増 企業、先行きに強い警戒感 新興国低迷、円高など逆風
内閣府が18日発表した2016年1~3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、中国をはじめとした新興国経済の低迷と円高進行などの逆風で、景気が停滞している実態を浮き彫りにした。この状況は長期化する可能性もあり、企業は先行きへの警戒感を強めている。
「中国経済のスローダウンなど、世界経済は大きなターニングポイントを迎えている。問題はこれがしばらく続くことだ」。みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長は景気の現状をこう分析する。
企業にとって大きな懸念材料は新興国経済の低迷だ。コマツの大橋徹二社長は「今年度の中国の建機・鉱山機械の需要見通しは20~25%減とみている。2兆元の財政出動の話もあるが、現場の話を聞くとまだまだ動きがない」と話す。
住友重機械工業の鈴木英夫常務執行役員も「アジアのIT分野向けの射出成形機の需要減が続く」と予測。ともに景気の先行指標とされる分野だけに先行きの見通しは厳しい。
円高進行のリスクものしかかる。日産自動車は2017年3月期の想定為替レートを1ドル=105円に設定した。前期から約15円の円高水準で、営業損益で約2500億円のマイナス要因になる。カルロス・ゴーン社長は「巨大なインパクトだ」と、警戒感を口にする。
個人消費も伸び悩んでいる。原油安、為替の乱高下や株安などの影響で、「年明け以降、消費マインドが冷え込んだ」(ヤマダ電機の岡本潤取締役)。牛丼の「すき家」を展開するゼンショーホールディングスの丹羽清彦グループ財経本部長によると、消費者の財布のひもは「ここにきてかなりしまっている」という。
期待された今春闘の賃上げ効果も限定的で、「先行きの不透明感が払拭できず、個人の消費意欲が減退し、むしろ貯蓄に回っている」(三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長)との指摘もある。
一方、消費を大きく押し上げてきた訪日外国人のインバウンド需要についても、「一巡した」(エディオンの久保允誉会長兼社長)との見方が出てきた。
「昨年の秋口から炊飯器のまとめ買いのような大物はなくなった」など、“爆買い”で存在感の大きかった中国人観光客の購入単価は下落しているもようで、客数の確保が課題になっているという。
GDPが2四半期ぶりのプラス成長だったことを、政府はデフレ脱却や経済再生に向け「前進する姿が確認された」(菅義偉官房長官)と評価したものの、日本経済は家計、企業部門とも力強さを欠き、牽引(けんいん)役不在の課題を払拭できない状況が続いている。
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