遅れれば世界の下請けに使われる! 第4次産業革命 求む民間のアクション
成長戦略+規制改革政府が19日に提示した新成長戦略の素案で「第4次産業革命」を打ち出したのは、少子高齢化で労働力が減る中、技術革新を通じて日本経済の生産性を飛躍的に高める必要があるからだ。ただ、政府がいくら目新しいメニューを示しても、民間企業が実際に動かなければ画餅に終わる。企業の意識改革に加え、政府も規制緩和などの環境整備を着実に進めることが課題となる。(山口暢彦)
「(技術革新に)乗り遅れれば、日本の主要企業が世界の下請けになる」。安倍晋三首相は、成長戦略の素案を示した19日の産業競争力会議でこう危機感を示した。
背景には、欧米で日本の第4次産業革命と同様の取り組みが進んでいることがある。ドイツは2011年から「インダストリー4.0」と呼ばれるプロジェクトを展開。米国も世界の優良企業を集め、技術を世界標準にしようとしている。
日本も、大企業中心にようやく技術革新を目指す動きが出始めた。
人工知能(AI)はNEC、NTT、ソニーなどが手掛ける。NECは6月、産業技術総合研究所と共同で、災害予測を可能にするAIの共同研究を開始。金融機関では三菱UFJ信託銀行が、AIが自動で運用する国内初のファンドを試験的に立ち上げた。
自動運転に関しては、トヨタ自動車、日産自動車など大手6社が、高精度の3次元地図などの8分野で共同研究をスタート。小型無人機ドローンは、ソニー子会社が橋の点検や測量事業に乗り出した。
政府は、こうした動きを産業界全体に広げたい考えだ。ただ、中小企業などで意欲が高いとはいえず、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主任研究員は「国際競争力を高める危機意識が必要だ。場合によっては、設備投資減税といった動機付けも必要だろう」と指摘する。
日本特有の産業構造克服も課題になる。日本はドイツより産業ごとの大手企業数が多く、企業の枠を超えた情報共有などは難しい側面があるとも指摘される。
政府の環境整備も欠かせない。国家戦略特区で試験的に規制をなくして課題を洗い出す取り組みや、ITを使いこなせる人材育成のための教育体制の整備が急務となる。世界経済失速による先行き不安などもあり、足元の企業の投資意欲は力強さを欠く。官民挙げた「生産性革命」の道のりは容易ではない。
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