分野別ポイント、少子高齢化を乗り越える施策は?

成長戦略+規制改革

 政府が19日示した新たな成長戦略の素案は、重点分野の筆頭に「第4次産業革命」を挙げ、技術革新を通じて、少子高齢化で低下する日本経済の成長力を高める方針を打ち出した。このほか、「健康」「環境」「農業」なども有望分野とし、成長に資する諸施策を盛り込んだ。主要なポイントを分野別にまとめた。

 【健康立国・医療現場にロボット技術】

 社会保障費の増加や人材不足が課題の医療・介護分野では、情報通信技術(ICT)を活用した最新医療技術の導入促進を図り、医療現場の負担軽減と効率化を目指す方針を示した。

 具体的には、治療や検査などの医療関連データのデジタル化を進め、情報を統一的に管理するシステムを構築。ロボットやセンサー技術などを使った最先端医療を導入し、医療や介護現場の省力化とサービスの質の向上を急ぐ。

 また、先端医療や個別化医療、再生医療などの技術、それを支える医薬品や医療機器、薬品などの海外展開を加速。医療技術やサービスのグローバル市場創出に向けたネットワークの構築や医療系ベンチャー企業への支援を推進する。

 複数の医療機関などをグループ化する「地域医療連携推進法人」を活用し、地域に応じたサービス提供の最適化にも取り組む。

 【環境投資・トップランナー制度で省エネ普及】

 環境分野では省エネルギー対策の拡充を中心に据えた。優れた事業者に他の事業者が追いつくよう求める「トップランナー制度」の対象を製造業中心からホテルやコンビニなどのサービス業にも広げ、今後3年で全産業の7割まで拡大する。先端の省エネ技術を普及させ、経済成長に向けた関連投資の増加を目指す。

 また、企業や家庭が節電した電力量を電力会社と売買できる「ネガワット取引」の市場を平成29年に創設し、消費抑制を促す。32年までに新築注文戸建て住宅の過半数を太陽光発電などで消費電力より発電量が上回る住宅「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」にする。

 42年までに新車販売に占める電気自動車や燃料電池車など次世代車の割合を5~7割とする目標も掲げた。普及に不可欠な商用水素ステーションを32年度までに160カ所に増やす。

 【海外インフラ受注を5年後倍増】

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)発効を見据え、国内が中心だった中小企業の海外進出の支援を拡大する。インフラシステムの海外受注額について平成32年に現状の倍増となる約30兆円の達成を目指し、輸出力の強化を図る。

 中小企業支援では、官民連携組織「新輸出大国コンソーシアム」を通じた専門家による支援を充実させる。インフラシステム輸出では、日本が得意な技術や環境性能に優れた「質の高いインフラ」の国際標準化に向け、人材育成や官民連携の強化に取り組む。

 また、農業分野では、農業資材の調達コスト低減に向けた検討を進め、農家の所得向上を後押しする。資材価格は購入先や地域によって大きな差があるため、流通構造や価格形成システムを透明化することで、自律的に価格が下がる仕組みの構築を目指す。具体策は秋にまとめる方針だ。

 【子育て世代支援では未入居賃貸を活用】

 新たな成長戦略では「既存住宅(中古)流通・リフォーム市場の活性化」が掲げられ、平成25年に11兆円の市場規模を37年までに20兆円とほぼ倍増させる数値目標が盛り込まれた。

 具体策では、優良な住宅の供給を増やすべく、住宅の省エネ化やリフォームを支援する一方、専門家による住宅診断や「プレミアム既存住宅(仮称)」の登録制度といった品質保証により需要を喚起。また、子育て世代などが必要な設備の住宅に入居できるよう、未入居の賃貸住宅を活用した仕組み作りを明記した。

 国内の住宅市場では、木造戸建て住宅の資産価値が「20~25年でゼロとなる」とされ、住宅流通量に占める中古の割合は15%前後にとどまる。だが、人口減少が進む中、若年・子育て世代の負担軽減と空き家の増加抑制に向け、新たな住宅市場を開拓・育成する必要が出ていた。