英国のEU離脱「深刻なリスク」 米再利上げも注視 問われるG7結束力
伊勢志摩サミット27日閉幕した主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言は、英国の欧州連合(EU)離脱問題について、「成長に向けたさらなる深刻なリスク」と明記し、先進7カ国(G7)の反対姿勢を鮮明にした。英国は6月に離脱の是非を問う国民投票を実施し、同月には米国の再利上げ観測も強まっている。世界経済の「二大リスクイベント」が迫る中、G7の結束力が早速問われることになる。
(藤原章裕、米沢文)
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「英国は貿易大国であり、EUという市場にアクセスできるように残留することは重要だ」
サミット閉幕後の記者会見で、キャメロン英首相はこう強調した。仮にEUを離脱した場合、雇用や投資に悪影響が出ると指摘。オランド仏大統領も会見で、「離脱は英国だけでなく、世界経済にも悪いニュース」と援護射撃した。
英財務省は、EUから離脱すれば、英国の国内総生産(GDP)は2030年までに6・2%縮小すると試算する。税収は360億ポンド(約5兆8千億円)減少し、EUへの拠出金(年約200億ポンド)を上回る可能性が高いという。
大和総研の山崎加津子シニアエコノミストは、英国がEUを離脱した場合、「フランスやイタリア、オランダ、フィンランド、デンマークなどでもEU離脱を求める動きが出てくるかもしれない」と警告する。
英国のEU離脱をきっかけに欧州不安が再燃すれば、日本企業の欧州向け輸出が減少し、業績悪化に直結する。さらに、世界の金融市場への悪影響も懸念される。
日銀幹部は「英国のEU離脱で投資家心理が悪化すれば、通貨の英ポンドとユーロが売られ、安全資産とされる円が買われやすくなる」と警戒する。
全国銀行協会の国部毅会長(三井住友銀行頭取)も5月の記者会見で「円高・株安などの懸念があり、金融業界にとっても大きな影響がある」と語った。
さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)が5月中旬に公表した連邦公開市場委員会(FOMC)の4月分の議事録では、大半の参加者が、6月の追加利上げが「適切になるだろう」との認識で一致した。
市場では、利上げが想定より近いと受け止められ、ドル高につながる早期の利上げ観測が再燃した。新興国市場の緩和マネーが流出すると受け止められれば、市場の混乱は大きくなりそうだ。
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