消費税増税2年半延期 健全化目標、ぎりぎり維持 社会保障影響も

 

 安倍晋三首相は、来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを2019年10月まで再び延期する方向で、政府・与党内の調整に入った。再延期されれば、増税による景気の冷え込みを回避しつつ、財政の健全性を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を20年度に黒字化する財政健全化目標も何とか達成できそうだ。ただ、延期した2年半は社会保障費の増大などを賄えなくなり、借金が膨らむ恐れもある。

 政府は現在、国内総生産(GDP)比で約3%の水準にあるPB赤字を、18年度に1%程度に縮小させた上で、20年度に黒字化することを目指している。

 再増税を19年10月まで延期することで18年度の中間目標は断念せざるを得なさそうだ。ただ20年度には5兆~6兆円程度と見込まれる税収増がギリギリで確保でき、目標達成の看板を下ろさずに済むというわけだ。

 ただ、税収増を当て込んでいた社会保障関連施策への影響は避けられない。政府は子育て支援や介護の充実など社会保障の充実に増収分の2.8兆円を投じる予定だが、財源不足は確実だ。子育て支援などを柱にした目玉政策「ニッポン1億総活躍プラン」の実現も危ぶまれる。

 内閣府の試算では、高い成長率が続いたとしても20年度に約6兆5000億円の赤字が残る見通しだ。これは再増税を前提としており、延期で借金の残高が想定以上に膨らみ、財政状態がさらに悪化する可能性もある。