消費税増税先送り 軽減税率など実施ずれ込み 住宅ローン減税は延長
安倍晋三首相が消費税率10%への引き上げを2019年10月に延期する方針を固めたことで、軽減税率の導入など増税を前提にした制度の実施はずれ込む見通しだ。来年4月の10%への増税に伴う駆け込み需要の反動減対策で導入した住宅購入時の負担軽減の税制なども延長されるとみられる。
「常識的に考えれば、そのまま延長になる」
財務省主税局幹部は打ち明ける。軽減税率は消費税率が10%であることが前提であるため、19年10月まで単純に延長される公算が大きい。
小売りなどの事業者は、軽減税率の導入で税率が複数になり、レジや受発注システムの改修が来年4月に間に合わない事態が懸念されていたが、延長により余裕を持って準備を進められる。中小企業対象の改修費の補助制度も来年3月末以降の延長が検討されるとみられる。
納税の不正を防ぐため、請求書に税率と税額を記載するインボイス(税額票)の導入時期は21年4月に予定されているが、制度の周知には十分な期間があるとの見方から、計画通り実行される可能性がある。
一方、増税による駆け込み需要の反動減対策として導入された住宅購入時の優遇も「首相が景気浮揚のために再増税を延期することを考えると縮小は考えにくい」(財務省幹部)。住宅ローンの残高に応じて最大年50万円分の所得税が減税される「住宅ローン減税」は現在、期限が19年6月までだが、再増税以降まで延長される見通しだ。
祖父母や親が子や孫に住宅購入資金を援助する際の贈与税の非課税措置も延長が予想される。贈与税の非課税枠は、反動減を見越して16年10月から17年9月までを3000万円と最大にする予定だったが、19年10月の前後の1年にスライドさせる可能性が高い。
住宅メーカーには来年4月の増税を見越して販売を強化する動きがあるが、住宅の消費税額は大きく、消費者は優遇措置を見極めながら購入を検討する必要がありそうだ。
首相の延期方針を受け、財務省幹部は30日、今後の対応を協議した。増税延期を明記した税制改正関連法案は参院選後の臨時国会で提出される見込み。政府・与党は関連する税制改正を個別に見直した上で、増税延期と合わせて一括した法案として臨時国会に提出する方向で調整する。
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■消費税増税延期で影響を受ける主な税制
・軽減税率
消費税10%への引き上げと同時に、飲食料品(酒類と外食を除く)と定期購読の新聞に税率8%を適用
・車体課税
消費増税と同時に、自動車取得税を廃止し、代わりに燃費性能に応じて購入額の最大3%を課税する新税を導入
・住宅ローン減税
2019年6月まで、住宅ローンの残高に応じて最大年50万円分の所得税を減税
・住宅資金贈与の非課税措置
19年6月まで、祖父母や親が子や孫に住宅資金を援助する際、贈与税に非課税枠
・地方税収の格差是正
消費増税と同時に、法人住民税の一部を国税化して地方に再配分する額を増やす
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