消費税増税延期、迫られる歳出入改革徹底 財源不足は不可避
消費税率10%への引き上げ再延期で、財政健全化の取り組みは正念場を迎える。国債残高は900兆円を超え、債務償還費などの国債費は歳出の4分の1に上る。将来の金利上昇に伴う国債利払い費の増加なども財政の圧迫要因となる中、社会保障の充実に充てられる予定だった消費税増税分の財源不足は避けられない。成長による税収増とともに、徹底した歳出入改革が迫られる。
税収増頼み
「財政健全化の旗は降ろさない。アベノミクスを加速させて税収を確保し、プライマリーバランス(基礎的財政収支、PB)の黒字化を目指す」
安倍晋三首相は1日の記者会見でこう強調した。
政府は2016年度に始めた新たな財政健全化計画で、新たな借金をせずに税収などで政策経費がまかなえているかを示すPBを20年度に黒字化する目標を掲げる。
安倍首相は目標を堅持する考えを示したうえで、安倍政権の3年間で国と地方の税収が21兆円増加したことを強調。増税延期やアベノミクスの推進で成長を実現し、税収の増加などによって財政健全化を実現すると訴えた。
もっとも内閣府の試算では、17年4月に再増税を実施し、名目成長率3%以上という高成長が実現した場合でも20年度に6.5兆円の赤字が残る。新興国の景気減速などで企業収益に陰りが見える中、税収増だけで実現できるかは予断を許さない。
政府は12年の「社会保障と税の一体改革」で、消費税率5%から10%への引き上げに伴う増収分をすべて年金や介護など社会保障制度の財源に充てることを決定。8%から10%への引き上げでは約4兆円の増収を見込み、1.3兆円を社会保障の充実に回す予定だ。
保育所運営費支援(必要財源1000億円)など子育て支援は、待機児童問題への対応を巡り、世論の激しい批判を浴びたこともあり、首相は実施する考えを示した。ただ「赤字国債は発行しない」(首相)考えで、財源確保が困難になるその他の施策については先送りの可能性がある。
高まる歳出圧力
増大する社会保障費などに対応するため、政府は新規国債を発行し続け、15年度末の国債残高は、14年度末から約30兆円増えて約910兆円にまで膨れあがっている。
借金返済は大きな負担で、16年度予算では、債務償還費や利払い費などの国債費に総額の約4分の1に当たる23.6兆円もの金額を計上している。
現在は日銀の金融緩和で低金利が続いているが、将来的に金利が上昇して国債利払い費が急増する恐れもある。財政健全化には抜本的な歳出入改革が急務だが、秋に景気下支えのための大型補正予算案を編成する方針で、歳出圧力は高まる。首相は難しいかじ取りを迫られる。
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