高齢者の社会保障に不安 消費増税再延期を表明

 

 消費税10%への引き上げが延期されると、私たちの生活にどのような影響があるのか。家計にとっては買い物などで出費が増える心配がなくなるのは朗報だ。だが、増税分を当て込む予定だった年金や介護への支援が十分にできなくなる可能性があり、高齢者の生活への不安は解消されそうにない。

 「消費税が上がって、いつもより買い物にお金がかかった気がする…」。2017年4月以降も当分は、こんな思いを感じずに済むことになった。

 消費税が8%から10%に上がると、税負担はどれくらい増える可能性があったのか。日本総合研究所の試算によると、年収300万円の勤労者世帯(家族2人以上)は年間3万3600円、年収1000万円では6万3600円の負担増になる。増税先送りでこうした実質所得の減少がなくなれば、個人消費にプラスに働きそうだ。増税を前提とした17年度の国内総生産(GDP)の成長率見通しを0.8ポイント前後押し上げるという予測もある。また、駆け込み需要の反動減対策のために講じられている住宅ローンの残高に応じた減税も延長されるとみられ、人生最大の買い物であるマイホームの購入を焦る必要もなさそうだ。

 一方、年金、介護、子育て支援などのメニューがずらりと並ぶ社会保障の充実策は、増税分を財源にする予定だったため、見通しが立たなくなり、取捨選択が迫られるかもしれない。

 例えば、年金分野では、増税と同時に低年金者への年6万円の支給や、年金受給に必要な加入年数の25年から10年への短縮を予定していたが、開始時期の見直しが検討される。年金の未納期間が長く、受給資格期間の短縮を心待ちにしていた人には冷や水になる。

 待機児童解消に向けた保育の受け皿整備については予定通り来年度から実施する方針で、子育て世帯には救いとなる。だが、その半面、高齢者や介護が必要な人が割を食えば、社会保障への不安から景気回復が遠のく事態も懸念される。