米国並みに大学スポーツ産業化のススメ 成長分野発掘、健康寿命の延伸も
高論卓説バドミントン界のエースが、不法カジノに出入りして処分を受けた。彼らは高卒選手だった。近年、高校スポーツ界の優秀選手たちは、進学せずに実業団に入る傾向にある。
日本企業の特徴にスポーツ利用があろう。宣伝、イメージアップ、社員の団結のために大金をかけて強化に走る。欧米のごとくクラブチームの発展の肩代わりを企業が行い、その伝統は根強い。
有名なコーチの指導を受け、給料をもらいつつ好きなスポーツをプレーできることが、大学で学問をしながら競技するよりも成果が上がると読む若い選手が増加。家族もスカウトの大金を目の当たりにして、実業団入りを後押しするらしい。
大学スポーツに興味を示さず、プロ選手同様の道を選択する背景には、アマチュアイズムの崩壊がある。あらゆるスポーツでプロ化が進み、日本スポーツ界の強化策のベースとなって久しい。
そこで、政府・与党は、大学スポーツを成長産業化させ、選手強化や施設拡充の資金づくりをしようと考えている。実業団に高卒アスリートが流れる一因に練習環境もある。一大学の財政事情から施設整備に投資する余裕がないため、国ぐるみで応援しようという方向だ。
まず、米国の全米大学体育協会(NCAA)をモデルにして、あらゆるスポーツの産業化を企画する。テレビ放映権料や入場料収入、広告収入、講習会収入などを念頭に、あらゆる収益を一括管理して各大学に分配する。NCAAの収入は年間約1000億円。これが各大学に分配され、施設費用や奨学金に利用されている。この日本版を目指すという。
遅きに失している印象もあるが、政府主導で計画すれば実現可能と読む。そのためには「全国大学スポーツ協会(NUSF)」のような団体を設立し、大学スポーツ全般を統括する組織を設立する必要がある。高校には、全国高等学校体育連盟(高体連)が存在するのに、大学には組織がなく、各競技バラバラで運営されてきた。
高体連の中に、人気の高い野球が入っていないのは、日本高等学校野球連盟(高野連)が、毎日、朝日の両新聞社で歴史的に支配され、潤沢な資金を野球の振興だけに使う目的があるからだろう。この例外措置を認めず、文部科学省主導でNUSFの設立を期待したい。
政府が前面に出る必然性は、大学のスポーツ施設建設への補助金や、マイナースポーツの振興が大切だからだ。非営利の統括新機関が創設されれば登録も一元化され、事務上も便利になる。競技場使用のスケジュール調整も容易となり、多くの競技で人気を高める効果も期待できる。
大学のスポーツ施設の貧弱さが、一般教養科目の「体育実技」を選択制に移行させるとともに、生涯スポーツの動機付けをも怠らせている。健康寿命を延伸させ、高齢者の医療費削減を目指す上でも大学のスポーツ施設は重要だ。だが、この施設建設への補助金はすずめの涙。大学は積極的に取り組まなくなっている。
2020年の東京五輪・パラリンピック開催を機に、政府・与党の取り組みを評価したい。新組織が稼働すれば、国際交流も促進され、スポーツ・ツーリズムの振興にも寄与する。ただ心配なのは、集客力のある団体をいかに納得させるかだ。各大学の協力姿勢も問われる。
大学スポーツ界で成長分野を発掘し、いかに料理するか、政府の手腕が問われる。
【プロフィル】松浪健四郎
まつなみ・けんしろう 日体大理事長 日体大を経て東ミシガン大留学。日大院博士課程単位取得。学生時代はレスリング選手として全日本学生、全米選手権などのタイトルを獲得。アフガニスタン国立カブール大講師。専大教授から衆院議員3期。外務政務官、文部科学副大臣を歴任。2011年から現職。韓国龍仁大名誉博士。69歳。大阪府出身。
関連記事