脱デフレこそ財政再建の近道 消費増税再延期 早稲田大・若田部教授
政府は2017年4月に予定した消費税率10%への引き上げを19年10月に2年半延期する。安倍晋三首相の判断や今後の政策運営について、早稲田大教授の若田部昌澄氏に聞いた。
--消費税の再増税が2年半延期された
「素晴らしい決定だが、14年に消費税率が5%から8%へ引き上げられてから消費が落ち込み一向に回復する兆しがない。消費はリーマン・ショックのときよりも落ち込んでいる。単なる延期で経済が復活できるのか。凍結もしくは消費税率を5%に戻す減税に踏み込むべきだった」
--なぜ凍結や減税が必要なのか
「消費者は『増税はいずれくる』と思うことで、節約志向が続いてしまうからだ。日程ありきの政策ではなく、名目GDP(国内総生産)600兆円が達成できたら、増税を慎重に考えるといった打ち出しが必要だ。デフレ脱却の状態をまずは定義する必要がある」
--具体的な政策は
「家計に行き渡るような政策、インフラ補修に加え、教育、科学技術振興などヒトへの投資が重要だ。補正予算の規模としては、(日本経済全体の需要と供給力の差を示す)需給ギャップが8兆~10兆円なので、一つの目安ではないか」
--財政健全化や社会保障費の充実に増税は必要では
「約20年のデフレで財政が悪化したのは事実。デフレ脱却こそが財政再建の近道だ。名目GDPが増えれば財政は良くなるし、基礎的財政収支も改善していく。債務残高比率も安定化しつつあるので財政再建は順調に進んでいるといってもおかしくない。増税を急いだ結果、財政再建ができなくなれば元も子もない」
--金融政策のみの景気浮揚には限界論も出ている
「物価上昇2%に向けて日銀は金融緩和策を続けているが達成は難しい。政府が増税を先送りした以上、日銀も追加緩和に踏み切るべきだ。デフレに対抗するため、政府、日銀が一緒になって対策を取るべきだ」
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