自民・小池百合子「崖から飛び降りる覚悟で」

東京都知事選 会見詳報
東京都知事選への出馬の決意を表明し、引き揚げる自民党の小池百合子氏=29日午前、国会

 自民党の小池百合子元防衛相(63)=衆院東京10区選出=は29日、国会内で記者会見し、東京都の舛添要一前知事の辞職に伴う都知事選(7月14日告示、31日投開票)への立候補を表明した。自身のカラーである黄緑のシャツに、白いスーツをまとって会見に臨んだ小池氏の発言要旨は以下の通り。

 自民党議員として、崖から飛び降りる覚悟で出馬

 「このたびの都知事選に、自民党議員として出馬の決意を固めた。地元の有権者はじめ、さまざまな方々から立候補の要請をいただいた。熟考した結論だ。都政の信頼回復、停滞の解消、山積する現在の課題の問題解決、希望あふれる未来の首都・東京の構築のために、崖から飛び降りる覚悟で挑戦したいと思っている」

 「未熟者だが、24年間の衆参議員生活、総務庁政務次官を振り出しとして、経済企画庁政務次官、環境相、防衛相、国家安全保障担当の首相補佐官も務めた。行政の実務にかかわってきた。なかでも27万人の自衛隊、防衛省を率いた経験は、私にとってかけがえのないものだ。任命いただいたのはほかでもない第1次安倍晋三政権だった」

 共感を呼び大義を達成するのは行政官にはできない

 「小泉純一郎政権下での環境相、ここでは気候変動対策として、クールビズを発案した。循環型社会構築の意識改革も進めてきた。国民のみなさまの共感を呼び起こして大義を達成する。その道筋を作ることは、行政官ではできない発想だと思う。それによって社会変革も確実に起こってきた。このメガシティー東京において、必要なことは、16万人の都庁職員にもうひとり、行政官を増やすことではない。未来へのビジョンを描き、職員の士気を高めつつ政策を実現することではないか」

 「これまで、国政で取り組んできた政策は多々ある。また、温めてきたビジョンも多々ある。この首都・東京で実現したい。ビジョンとは、『東京を守る、東京を進める』だ。今守るべき東京。人々の毎日の生活を守る。さまざまな災いから命を守る。財産を守るということだ。信じ合える東京、誇り合える東京としたい。東京を進めるというのは、2020年東京五輪・パラリンピックの成功はもとより、この後のポスト2020をにらんだ新しい東京の創造だ。これまでの経験から、経済、金融、環境などに軸足を置きたい」

 女性初の都知事目指す

 「私は豊島区が地元だが、東京23区で消滅可能性があると指摘を受けた。少子化対策、育児の環境を整えることや、それ以前のさまざまな出会いを作るのも必要だ。今こそ未来を見据え、東京がアベノミクスの第三の矢、成長戦略のけん引力になるべきだ。アベノミクスを東京から、さらに発信していく。さまざまな課題を東京から解決する、リード役を務めたい。初めての東京の女性知事を目指すに当たり、1人1人の生活にきめ細やかな目を向けたい。そして、女性、男性も働き方の改革を進めなければならない。それによって、自らを高める時間や家族との生活を楽しむ、そんな夢あふれる、安心できる東京にしていかなければならない。結果として、今の日本の課題である生産性向上につながると思う。育児支援、介護難民問題、貧困対策、自ら体験した自宅で母を看取るといった経験をもとにして、地域包括ケアシステムをさらにブラッシュアップすることも必要だ」

 「東京五輪は、関係者の努力で開催予定となっている。政府・与党、組織委との連携のもとで、国民、都民の共感とともに成功させねばならない。ちなみに私は3年ほど前から、日本ウエートリフティングの会長をしている。ウエートリフティングは、リオの開会式翌日の最初の種目だ。メダル狙える最初の種目だ。次の都知事選は、東京五輪にかかる。提案したいのは、次の都知事選は、今回の結果、知事となって任期を約3年半とすることで混乱を避ける方法もある。いろんな問題は、いろんな知恵を使えばいい。国民がいま、東京五輪がどこか違うところで決まっているような思いを抱いている方も多い。ぜひ、国民の共感、都民の共感を得て、東京五輪は成功に導かなければならない。共感を呼ぶ知恵を出したい。大義ある政策を国民、都民の共感とともに進める。これが、私のこれまでの政治手法だ。まずは都政の信頼を回復する、首都・東京が日本のみならず、世界のエンジン役となるよう、最大限の努力をしたい」

(以下、質疑応答)

 自民党の公認・推薦なければ…

 --自民党は前総務次官の桜井俊氏に出馬を期待している。自民党の公認や推薦を得られなくても出るのか

 「冒頭、自民党議員として決意を語った。これからの情勢を見極めながら決めたい」。

 --出馬の意思を固めた?

 「そのように受け止めていただいて結構だ」

 --任期を3年半にするのは公約か

 「意志として3年半と区切り、これを公にして実行する。それによって混乱を避ける知恵だ。さまざまな課題はあるが、いったん立ち止まってじっくり考えてみると、いろんな知恵がわいてくる。日本が抱えているさまざまな課題は大きい。そういう中で知恵を出していく発想力は、私は自信を持っているつもりだ」

 --都議会でも問題になった、舛添氏による韓国人学校への都有地貸出し方針はどうする

 「お答えはシンプル。白紙とすべきだ」

 -自民党の支持が得らなければ、出馬はなくなるのか。離党してでも出るのか

 「あくまでも私は自民党議員だ。今日は出馬についての意思を明確にした。これからの流れを見極めたい」

 -自民党に意思を伝えて働きかけは

 「ここに至るまで、党の然るべき方に相談している。本日の会見についても伝えた。いろんな方に相談したい。参院選のまっただ中だ。出馬表明をすることが、自由闊達(かったつ)な自民党であること、1人1人の議員がこのように活動しているということを世に知らしめ、むしろプラスに転じる。そう考えて、出馬表明した」

 --自民党公認・推薦得られなくても出馬するのか

 「それは仮定の話。これから見極めていきたい」

 政治とカネは…

 --都連、党本部は国会議員を出すべきではないと。どの程度話をしているのか

 「2週間ほど前に行われた都連の国会議員との話でも出された。確かに舛添前知事のお金にまつわる問題で都知事選につながっている。ならば、すべての国会議員が黒、グレーなのかというと、違う。圧倒的多数は政治資金のルールにのっとっている。ロシアの陸上選手がドーピングでそっくり出場できないとなりつつあるが、個人として出場枠を確保する話も出ている。国会議員がすべてやましいことをしている、お金にまつわる問題を抱えているということを国会議員自らが認めるようなことがあっては、国政に対しての信頼が確保できない。国会議員のバッジをつけているからこそ、先ほど申し上げたビジョンを描き、それを実行するリーダーシップが発揮できると思っている」

 --東京五輪に都民の共感得られるように、と。今後はどう進めるのか

 「東京で開かれる五輪は50年ぶりだ。都民が盛り上がらないといけない。多くの海外からのアスリート、お客さまを迎えるにあたり、東京都民の頭の中にクエスチョンマークがたくさんついているようでは、勢いがない。ホストシティにはなりえない。各地で問題になっているが、五輪後の財政難、廃虚と化すようなハードについて、東京はむしろ模範を示すべきで、そのためにも、決定過程を含めて透明性を高めて近代化することが必要だ」

 --自民党議員として出馬決意というが、出馬の際に前向きな意味で離党することも視野に入れているのか

 「あくまでも現時点では自民党議員で、党員でもある。これからさまざまな流れが出てくる。それをしっかりと見極めていきたい、この一言に尽きる」

 小泉、細川護煕両元首相の支援は

 --前回都知事選で。小泉、細川両元首相が脱原発を訴えた。連携、支援の予定は

 「ございません」

 --政治とカネ、まったく問題ない自信ある?

 「飲食代は誰と食べて、それが会議なのか、党なのか私的なのか、非常に分かりにくいのは事実だ。よって、私は飲食代は計上しない。自腹と、やせガマンでいくことにしている。今回、問題になった会議代とか、飲食にまつわることについては、一切ない」

 桜井パパは…

 --桜井俊氏についてはどう感じているか

 「それは事務次官まで勤められた、大変立派な方だと思っている」

 --昨日までは、立候補について「見極めて考える」と。今日になって会見したきっかけは

 「要請をいただいて、街を歩いていて、女性、男性から早く表明してほしいという声を多数頂戴した。7月14日から選挙戦が始まる。政策を磨き上げたり、ポスターの準備だとか、実際問題としてすでに遅い状況かと思う。そういう意味で総合的に、本日発表させていただいた」

 --石原会長は、候補者に関して「出たい人よりも混乱を解消できる人」と。都連は了承済みか

 「さまざまなところで、然るべき方には伝えた。一方で、議員バッジをつけているとダメ、ということだ。しかしながら、私は、1人1人議員には出馬を表明する権利はある。そういったことから都連についても説得、お願いしてまいりたい」

 --現段階では支援や了解得られていない

 「一切ない」

 --五輪に関しては負担割合を協議中。リオ五輪後にも出るといわれているが、負担が増えるようになったら見直すのか

 「いろんな工夫されるべき。これだけ負担がかかるからと積算し、都がどれくらい負担するというだけでない。もう一度知恵を出す課程が必要だ。東京都で負担できる、都民の理解を得られるのはどういったところなのか、判断をしていくことになると思う」

 --16万人に行政官1人が加わるべきじゃない、というのは誰か(桜井氏?)を想定しているのか

 「国会議員、議員関係はNGであるということだ。そして、実務経験や行政から(この人がいい)、とメディアの情報で受け止めている。私は、環境省、小さな所帯ではあるが、これまでにできなかった発想で切り開いてきて、あの環境省は、そのとき大きな役所になったのではないか。地球温暖化にも国民意識が高まったと自負している。環境相に就任したとき、プロである実務者の1人に埋没すると大臣の意味がないじゃないかということで、実務については職員の士気を高めつつ、彼らの能力知恵経験を引き出すことが最高司令官の役割ではないかと思い、クールビズのキャンペーンを始めた。思い切った策を出すためには、課題が多くても、突破力でやっていくのは、ビジョンを持った政治家ではないかと思う。各47都道府県(知事)をみても、中央官庁からのある種の天下りのような形が多い。大変、能力があって、すばらしい職責を果たしている人もいる。しかしながら、やはり首都・東京都いうのは一国に相当するわけで、実務能力は当然のことながら、今求められるのはパッションやビジョンだ。それが都民のやる気、希望、安心につながるのではないかと確信を持って申し上げる」

 --五輪については誰かを想定しているか

 「メッセージが都民に共感が持てるメッセージでなく、逆方向に行ってしまったことがあった。明確なリーダーシップで透明性の確保、近代化を続けることが都民にとっての五輪につながる。今は遠いところに感じている都民は多いのでは」

 安倍首相と相談は…

 --アベノミクスを発信というが、安倍首相と相談したか

 「知事選立候補については、直接は話していない。参院選や、これまで党の要職を重ねた役割から、しっかりとアベノミクス、特に第3の矢の成長戦略を率いていくのは東京だと思う。例えば金融。金融の中心はいつのまにかシンガポール、香港に移った。英国のEU離脱決定でロンドンも揺らいでいる。私はテレビ東のワールドビジネスサテライトの初代キャスターだが、私は金融の重要性を知っていて、知恵も若干ある。アベノミクスの成長戦略を引っ張っていく」

 「もう1つは女性だ。『女性が輝く』と進めているが、それを体現できるのが東京の女性知事だと思っている。いま液体ミルクの国内製造を訴えている。日本は粉ミルクの国だ。第一は母乳だが、液体ミルクは、そのまま赤ちゃんが飲めるということで、東日本大震災、熊本地震にもたいへん重宝されたと聞いている。そういったことも、小さなことかもしれないが、消費者や都民の気持ち、ニーズ、希望をつかむ。企業でいうならマーケティングかもしれないが、政治こそ最大のマーケティングであり、それが成長戦略につながり、国民の共感得られるアベノミクスにつながると確信している」

 --任期3年半は、どういった方法で可能になる

 「それは知事として言い切るということだ。承認は都民全員だ。その約束を守らずにダラダラと続けない。何日までというのは今は申し上げられないが、まずは、全ての面で東京五輪の環境を整えるという意味で、次の都知事選が足を引っ張るというのは避けなければならないということで考えた。辞職という形になると思う。条令、法改正の必要はない。都知事として公約し、実行する。それを実行しなければ都民からブーイング出るのは明白だ。都民目線ですすめ、国政、都政の混乱につながらないようにするのは当然のことだ」