「英EU離脱」と「大阪都構想」…2つの投票の共通点 二者択一が生んだ後悔
□【視点】産経新聞論説委員・鹿間孝一
欧州連合(EU)からの離脱を選択した英国の国民投票が世界を揺るがせている。だが、一番動揺しているのは当の英国民のようだ。
ツイッター上では、Regret(後悔)をExit(離脱)と掛け合わせた「Regrexit(リグレジット)」や、Britain(英国)と合わせた「Bregret(ブリグレット)」といった造語が生まれた。
大接戦だったが、直前に残留派が優勢という予想が流れて、判官びいきのような同情票が集まる「アンダードッグ(負け犬)効果」が働いたのだろうか。
離脱を選んだ人がテレビのインタビューに「私の票はあまり意味はないと思っていた。どうせ残留だろうと予想していたから」と答えていた。
ロンドンでは離脱に反対するデモが行われ、スコットランドは独自にEU残留を表明した。下院の請願サイトには再投票を求める署名が増え続けているという。
が、後悔先に立たずである。
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地域別と年代別の投票結果に興味をひかれた。スコットランドと北アイルランド、それにロンドンで残留票が離脱票を大きく上回った。18~24歳の73%、25~34歳の62%が残留に票を投じた。
世界の注目度や、及ぼす影響は格段に違うが、昨年5月に行われた大阪都構想の是非を問う住民投票とよく似ている。
都構想はわずか0.8ポイント差で反対票が上回り、否決されたが、大阪市の北半分で、さらに20代から40代の有権者では賛成票が多かった。
EU離脱を選択した高齢層は、かつて英国が輝いていた時代への追憶があるのだろう。経済や国際社会への影響より、独自性の回復を優先した。
それに移民問題がある。EUの一員であれば、これからも移民、難民を受け入れ続けなければならない。職は奪われ、治安上の不安も大きい。
一方、大阪では年齢が高くなるほど、長年暮らす地域に愛着があり、変化を望まない。「(都構想によって)大阪市をなくせば元に戻れない」という訴えがストレートに響いた。
対して若者はどちらも未来を見据えた。
EUから離脱すると、英国の経済は縮小し、国際社会での存在感も失われる。欧州の一員として自由に往来できるのも望ましい。残留は現実的で理性的な選択だった。
大阪は地盤沈下が指摘されて久しい。経済的にも東京との差が広がる一方の現状に不満を感じ、その原因が府市の二重行政にあるとして、変化を求めた。
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国民(住民)投票は「離脱」か「残留」か、あるいは「賛成」か「反対」かの二者択一で、1票でも多い方が結果を総取りする。民主主義の大原則は否定できない。だが、未来を担う若者の選択が生かされないのは、どうも割り切れない。
大阪都構想の住民投票の直後に、ジャーナリストの武田徹さんが産経新聞夕刊(大阪発行)に寄稿して、ダウダールルールの応用を提案していた。
ハワイとオーストラリアの間に位置する小さな島国ナウルでは、複数が立候補した選挙で分割して投票することが可能という。最も支持する候補者に1票を投じるだけでなく、2番目に支持する候補者に1/2票、3番目にも1/3票を投票できる。1位票では負けていても、2位票、3位票を集めて逆転できる。
国民(住民)投票では、例えば1人3票を持って、「賛成」あるいは「反対」に3票とも入れるか、2票と1票に分散して投票できるようにしてはどうかというのだ。
どちらか一方に決めかねている有権者は少なくない。実現は難しいだろうが、より民意を反映できる気がする。
都構想が否決された大阪では、総合区制度の導入など別の改革が検討されている。さらに再び都構想の住民投票を、という声もある。
英国では国論が真っ二つに割れた。敗者復活の道が残されていれば、英国民も後悔せずにすむだろうに。
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