スプラトリー諸島には「島」は存在せず 中国の「歴史的権利」も否定
南洋工科大学(シンガポール)の古賀慶助教
古賀慶・南洋工科大学助教(シンガポール)
南シナ海をめぐる仲裁裁定は、裁判所が管轄権をめぐる争点でフィリピンの主張をほぼ全面的に認めた。中国が南シナ海の主権を主張する根拠としていた「九段線」の「歴史的権利」についても否定した。この海域での資源を排他的に支配してきた歴史的証拠はなく、中国がそれを主張する法的根拠は認められないと踏み込んだ。フィリピンには想定以上の大勝だろう。
裁定はまた、スプラトリー諸島には「島」は存在しないとした。台湾が実効支配するイトゥアバ(中国名・太平島)も「岩」と認定した。同諸島海域で、排他的経済水域(EEZ)は一切発生しないとの司法判断が示されたことになる。
中国の九段線に関する主張は法的根拠を失ったことで、論理的にはこの海域で、米国が軍事演習なども伴った「航行の自由」作戦を行う法的なお墨付きを得た格好だ。同裁判所には執行能力はないが、米国など関係国が司法判断を自国の行為の正当化につなげることもできる。
裁定は、中国がフィリピンから奪ったスカボロー礁付近における「伝統的漁業権」が、フィリピン、中国など周辺国にも及ぶと配慮も見せたが、中国がフィリピン漁民への妨害行為を行っているとも認めた。
不利な裁定内容に、中国の反発も予想される。フィリピンや米国は、まずは人工島などについて、埋め立て行為などの凍結を模索するなど冷静に対応し、不必要に緊張を高めないよう配慮する必要がある。(談)
関連記事