G20首脳宣言 保護主義対抗姿勢を確認へ 世界経済の成長阻害

 

 中国・杭州で4日開幕した20カ国・地域(G20)首脳会議は、自国経済を一方的に優先する保護主義がテーマとなった。貿易量の減少を通じて世界経済の成長を阻害しかねず、5日にまとめる首脳宣言では保護主義に反対する姿勢を打ち出す見通しだ。ただ、鉄鋼などの輸出拡大を正当化したい議長国・中国の思惑も見え隠れする。

 中国の習近平国家主席は4日の首脳会議開幕式で「各国は新たな保護貿易的な措置を取らない合意を厳守し、適切な行動をもって貿易を拡大すべきだ」と訴えた。

 世界貿易機関(WTO)によると、世界の貿易量の伸びは昨年まで4年連続で3%を割り込んでおり、今年も2.8%にとどまる見通しだ。新興国経済の減速で需要が伸び悩んでいるためだが、保護主義が広がればそれに追い打ちをかけかねない。

 米国では大統領選の候補者が相次いで環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への反対を表明。英国の国民投票では欧州連合(EU)離脱派が多数を占めた。低成長や格差の拡大を背景に、世界で自国産業を保護し、自由貿易と距離を置こうとする動きが出ている。

 安倍首相は4日のG20首脳会議で「自由貿易は成長のエンジンであり、保護主義の誘惑を断ち切るのが政治の責任。TPPを停滞させてはならない」と述べ、各国のTPP早期承認を求めた。

 議長国・中国の呼び掛けで、G20は首脳宣言で「保護主義への対抗」や「通貨の競争的な切り下げの回避」を確認する見込みだ。ただ、方向性では一致しているとはいえ、個別の事案については各国の認識には隔たりがある。国内世論も絡み、実行のハードルは高い。(杭州 田村龍彦)