協調もくすぶるリスク　中国、鉄鋼の過剰生産解消難しく　欧米も不安定

　【杭州＝田村龍彦】５日閉幕した２０カ国・地域（Ｇ２０）首脳会議は首脳宣言で、世界経済の成長に向け、各国が協調して構造改革などに取り組む姿勢を打ち出した。だが、中国の鉄鋼などの過剰生産能力の解消は容易ではなく、英国の欧州連合（ＥＵ）離脱や米国の追加利上げの影響など、下ぶれリスクはくすぶったままだ。

　日米欧などは新設するフォーラムを通じ、中国に過剰生産能力の削減を働きかけたい考え。ただ、「削減目標を設定したり、強制するものにはならない」（国際金融筋）との見方が強く、中国がどこまで本気で国営企業改革などに取り組むか見通せない。

　今回の首脳会議では、メイ英首相が外交デビューを果たしたが、ＥＵ離脱に向けた交渉の道筋は不透明だ。投資や雇用が手控えられ、英・ＥＵの成長率を押し下げる懸念がある。

　イタリアでは１０月に憲法改正に関する国民投票も予定されている。レンツィ首相が退陣するような事態になれば、再び「欧州リスク」が意識されかねない。

　米景気は底堅く、世界経済の牽引（けんいん）役だが、米連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）の早期の追加利上げは、新興国からの資金流出などを引き起こす可能性がある。

　Ｇ２０は２０１８年までにＧ２０の成長率を２％引き上げる目標だが、１％程度にとどまる見通し。各国の「成長促進策の実行が遅れている」（国際通貨基金）ためで、日本も労働市場改革など成長率を底上げする取り組みが迫られている。