量から金利へシフトし持続性高めよ 伊藤元重・学習院大教授

 

 --日銀がこのタイミングで「総括的な検証」をまとめる狙いは

 「『2年で2%』の物価目標を達成できず、国債を大量に買う量的緩和は即効性はあるが、持続性を考えると問題が出てきた。さらに、マイナス金利が加わったことで、イールドカーブ(国債の利回り曲線)が平坦(へいたん)化し金融機関の経営に影響が出てきた。マイナス金利を維持しつつ、国債の購入量を柔軟化するいいタイミングだろう」

 --国債の購入量を年80兆円から70兆~90兆円などと柔軟化した場合、緩和の縮小と受け取られるリスクは

 「市場は過剰反応するケースがあり、日銀の発信の仕方がポイント。個人的にはマイナス金利の深掘りはあり得ると考えており、緩和を長期化するというスタンスをしっかり伝えることが重要。ただ、現行の国債買い入れはどこかで限界がくる。金融政策を『量』から『金利』にシフトしていくことが持続性を高める手段だろう」

 --2%の物価目標にこだわるべきか

 「為替への影響もあるが、経済学的にも2%ぐらいの物価上昇が望ましい。そうなれば、企業の賃上げ率は成長産業で3~4%、伸びていない産業でも横ばいを維持できるからだ。達成できないから2%の目標を下げるというのは本末転倒だ」

 --ヘリコプターマネーや外債購入論が浮上している

 「金融・財政政策を連動させる『ポリシーミックス』であれば議論されるべきだが、国の借金を日銀が肩代わりする『財政ファイナンス』の議論にすべきではない。外債購入は理論的にはあり得るが、為替操作と受け取られかねず、ハードルは高いだろう」

                   ◇

【プロフィル】伊藤元重

 いとう・もとしげ 東大経卒、米ロチェスター大大学院経済学博士号取得。東大教授、東大大学院教授を経て2016年4月から学習院大教授、同年6月から東大名誉教授。政府の税制調査会委員などの公職も務める。64歳。静岡県出身。