リニアの経済効果最大化 国交省、駅周辺整備など年度内に調査開始

 

 国土交通省は24日、リニア中央新幹線の全線開業前倒しに向け、経済効果などを高めるインフラ整備や制度設計を目的とした調査プロジェクトを年度内に立ち上げることを決めた。リニア開業は移動時間の大幅短縮に伴う新たな人やモノの流れだけでなく、ライフスタイルそのものにも変革を起こす可能性があり、国交省は早期に青写真を示し、地方との意思統一も図っていく考えだ。

 年度内に関係自治体や有識者などから、要望や想定される経済効果などのヒアリングを実施。ヒアリングをたたき台に、検討すべき政策を検討するための有識者や自治体関係者、業界関係者などからなる検討会議を立ち上げる。来年度以降の調査費も確保する。

 プロジェクトが目指すのは、リニア効果を最大化するための“お膳立て”だ。たとえば、中間駅の建設が見込まれる神奈川県の相模原周辺は、リニアを利用すれば成田空港より中部国際空港の方が移動時間が短くなる。相模原は近接する圏央道を経由すれば日光に近く、前もって駅周辺にバスターミナル拠点を整備すれば、中部国際空港から訪日外国人旅行客を呼び込み、日光に誘客するルート形成が可能になる。

 通勤圏が拡大することで、企業によってはオフィスを都市部から郊外に移転する経営判断も考えられる。それを見越し、地方自治体が主導して中間駅周辺にオフィスビルを整備したり、高速インターネット網が充実したりすれば、地方と都市部の人的交流が一層促進される契機にもなりうる。

 東京-大阪間を67分で結ぶリニア開業は、新たなビジネスチャンスや需要の掘り起こしにつながるだけでなく、二地域居住やテレワークの普及などライフスタイルの変化まで見据えた政策の検討が求められる。

 仮に大規模な再開発やインフラ整備が必要な場合、都市計画や用地買収などで10年以上を要するケースもある。国交省はリニアと相乗効果が見込めるインフラ整備や制度について早期に整理し、自治体との協力態勢を整える。

 リニアをめぐっては、政府が財政投融資の活用で、2016~17年度に計3兆円をJR東海に貸し出し、東京-大阪の全線開業時期を当初計画の45年から最大8年早める計画で、政府が関連法の改正案を今国会に提出している。