4年目の「官製春闘」に警戒感強める経営者 中小賃上げも焦点に

 

 安倍晋三首相が平成29年春闘での賃上げを要請したが、円高などにより企業の経営環境は厳しく、経営者らの警戒感は根強い。過去3年の「官製春闘」は、アベノミクスで業績の改善が続いていたが、“潮目”が変わった4年目は、労使交渉も難航する恐れがある。

 国内の春闘相場をリードする自動車業界だが、円高の影響により28年9月中間決算は大手7社すべてが減収だった。筆頭格のトヨタ自動車も本業のもうけを示す営業利益が前年同期比で約3割減益となった。29年3月期の業績予想もコスト削減などにより上方修正したものの、最終利益は前期比33%減と振るわない。上場企業の29年3月期決算の見通しは、営業利益が5年ぶり減益となる見通し。業績悪化時の賃上げというジレンマにより、賃上げ交渉は難航する可能性が高い。

 さらに業績悪化を理由にニコンが1千人規模の人員削減に踏み切ったほか、海運不況に直面する国内海運大手3社はコンテナ船事業の統合を余儀なくされるなど、日本企業の経営環境は厳しさを増している。身を切る改革の最中の企業にとって、賃上げは困難だ。

 それだけに企業経営者からは賃上げに慎重な声が上がる。日産自動車の西川広人・共同最高経営責任者(CEO)は、29年春闘での賃上げについて「経済環境は厳しく、『どれだけのことができるか、検討する』というのが今言える範囲だ」と述べるにとどめた。

 賃上げを継続する意向を示した経団連の榊原定征会長も、基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)については、「先行きが不透明な中で重い存在になる。こちらから(企業に)強く要請する状況ではない」と打ち明ける。会員企業にはボーナスを含めた年収ベースでの賃上げを求めていく考えを示した形だ。

 一方、過去3年の賃上げは大企業が実施の中心で、中小企業や非正規労働者の賃上げは課題となったままだ。国内消費の低迷などで中小企業の賃上げは進んでおらず、大手と中小の賃金格差が問題視されている。