安倍首相の記者会見詳報 「オバマ大統領に感謝」「TPPは米国抜きでは意味がない」

 

 【ブエノスアイレス=田北真樹子】安倍晋三首相は21日午後(日本時間22日午前)、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで記者会見した。詳報は以下の通り。

 「さきほど福島県沖で強い地震が観測され津波警報が発出されました。私からは国民に対して、津波避難に関する情報提供を適時的確に行うこと、早急に被害状況を把握すること、災害応急対策に全力で取り組むことについて指示しました。官房長官に対しても直接重ねて対応に万全を期すよう指示したところであります。自治体とも緊密に連携し政府一体となって安全確保を第一に災害への対応に全力で取り組んでまいります。

 現職の総理大臣として57年ぶりにアルゼンチンを公式訪問いたしました。57年前に各地で大歓迎を受けたそのときの思い出を私の祖父もよく語っていました。そして今回もあのときと変わらぬ心温まる歓待で私を迎えてくださったアルゼンチンの皆様にまずは心からの感謝を申し上げたいと思います。日本とアルゼンチンの友好の歴史は1世紀以上にわたります。一人の日本人の若者が希望をもってここアルゼンチンの大地を踏みしめてから130年。現在6万5000人の日系人の皆さんが暮らしておられます。昨日訪問したペルーには10万人の日系人の皆さんがいらっしゃいます。まさに日本とペルー、日本とアルゼンチンの友好の懸け橋であります。この素晴らしい礎の上に人的な交流や経済分野での協力を一層拡大していく。

 今回の訪問では、アルゼンチンのマクリ大統領、ペルーのクチンスキー大統領と、日本と両国との関係を戦略的パートナーに引き上げていくことで合意いたしました。ペルーでも、ここアルゼンチンでも、日系人のみなさんいお目にかかる機会を得ました。持ち前の勤勉さで地域の発展に力を尽くし、深い信頼を勝ち得てこられたみなさんに心から敬意を表したいと思います。同時に、戦前、戦中、戦後、日系人の皆さんが乗り越えてきた幾多の困難に思いをはせ、私たちの同胞を温かく迎えてくださった南米のみなさんの寛容さに感謝の念を抱かずにはいられません。

 かつて、世界恐慌を契機に極端な保護主義や排他主義が紛争の芽を育て、世界を戦争へと駆り立てました。その反省を胸に深く刻み、自由で開かれた経済こそが平和と繁栄の礎であると私たちは改めて認識する必要があります。決して内向きになってはなりません。活力あふれる世界にこそ、成長のチャンスがある。こうした発想の原点に私たちは立ち戻るべきであります。それが今年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の最大のテーマでありました。日本が提唱し、APECが誕生してから30年近く、相互の情報のグローバルな流れは飛躍的に拡大し、かつ進化してきました。自由貿易のメリットを最も享受してきたのが、このアジア太平洋地域であります。

 現在、世界経済は大きな下方リスクに直面しています。現在、世界経済は大きな下方リスクに直面しています。しかし私たちは絶対に後戻りはしない。今年のAPECでは自由貿易を推進するアジア太平洋諸国の確固たる意思を世界に示すことができたと考えています。自由で開かれたマーケットの下で、その恩恵をあらゆる人が享受できる、そのためには誰もが活躍できる社会づくりを急がなければなりません。そして頑張った人の努力がしっかりと報われる、そのための透明で公正なルールが必要です。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)はそうした、自由で公正なルールに基づく経済圏を太平洋に作り上げる、野心的な挑戦であります。TPP首脳会合ではすべての参加国がその挑戦をやり遂げる決意を改めて共有しました。日本では先般、協定案が衆議院を通過しましたが、今後とも丁寧な上にも丁寧な説明を重ねながら、一日も早い締結に向けて全力を尽くしてまいります。

 APECには11の国と地域からリーダーたちが集まります。この機会を利用して、各国首脳と積極的に会談を行いました。ロシアのプーチン大統領とは来月の山口訪問を見据えながら、8項目の経済協力について今後の具体的な作業計画を合意し、平和条約に向けた協議をさらに前進させていくことを確認しました。70年以上実現していなかった平和条約の締結は、簡単な課題ではありませんが、プーチン大統領との信頼頼関係のもとに、着実に一歩一歩前に進んでいきたいと考えています。中国の習近平国家主席とも短時間でしたが会談を行いました。来年の日中国交正常化45周年、そして再来年の日中平和友好条約締結40周年に向けて日中関係を改善させていくことを確認しました。

 そして、わが国唯一の同盟国である米国、この4年間私の最大のパートナーであったオバマ大統領にはこれまでの日米同盟への強化への取り組みをたたえる感謝の意を表しました。戦後、71年の本年、オバマ大統領は米国のリーダーとして初めて被爆地広島を訪れ、核兵器のない世界という未来への力強いメッセージを発出してくれました。テロ、貧困、感染症、世界はいまもさまざまな課題に直面しています。こうした課題に日本とアメリカはこれまでもいまもそしてこれからも希望の同盟としてともに手を携えて取り組んで行きたいと思います」

 --今回の一連の会議や会談でTPPを含む自由貿易の堅持をしていく考えを訴えた。ただ米大統領選にもみられたように保護主義的な風潮が広がり、国内でも格差の拡大や恩恵に浴していないという懸念や批判が出ている。こうした懸念や批判にどう取り組んでいくか。トランプ次期米大統領はTPPからの離脱を言っているが、トランプ氏が対応を変える可能性はあるとお考えか

 「自由で公正な貿易を堅持させ、そして発展させていくことこそが大企業のみならず、中小企業や労働者、そして消費者にとって適切な経済的機会を作りだすものであり、世界経済成長の源泉であると考える、しかし自由貿易の利益が均霑(きんてん)されない、そして格差が拡大するというが懸念が保護主義をもたらしている。安倍政権は格差が固定されず、あらゆる人がその経験や能力を思う存分発揮できる、そして活躍できる1億総活躍社会の実現を進めてきました。その実現に取り組んできた。頑張れば報われる、成長の恩恵が広く国民に実感されることで自由貿易にたいする支持も得られると考える。ちなみに、先月末に公表された全国消費実態調査にもとづく相対的貧困率は集計開始以来初めて減少した。特に子供の相対的貧困率は大幅に改善しました。アベノミクスは成長一本やりではないか、一辺倒ではないかという批判もあるが、しかしそうではなく、私たちの経済政策は格差の縮小にも効果を上げていることが証明されたと思う。今後ともこうした政策をしっかりと進めていきたい。成長し、富をめざし、それが国民に広く均霑される、多くの人たちが成長を享受される社会を作っていきたい。

 今般のTPP首脳会合では、TPP協定の高い戦略的、経済的価値が改めて確認されました。米国の大統領選挙後の状況受けて、国内手続きを遅らせたり、あるいはやめようという国は一国もなかったのであります、今国会で承認が得られるよう全力でとりくむとともに、あらゆる機会をとらえて他の署名国に国内手続きについて早期の完了をはたらきかけていく考えです。米国抜きでTPP発効を目指すという意見については、12カ国の会議では、そのような議論にならなかった。TPPは米国抜きでは意味がない。再交渉が不可能であると同様、根本的な利益のバランスがくずれてしまいます、米国新政権の方針について現段階で予断もってコメントすることは差し控えたいと思います」

 --今回の訪問の目的は

 「3年前の訪問はIOC(国際オリンピック委員会)総会において、東京オリンピックパラリンピック招致のための訪問でありました。あの時、最後の瞬間まで開催都市がどこになるか。分からない緊張感の中で会長の発表を待ったわけですが、東京という発表、今でも記憶に残っています。あの時の感動とともにこのブエノスアイレスの美しい街並みを思い出します。今回はアルゼンチンへの公式訪問であります。日本の総理大臣としては57年ぶりの公式訪問ですが、大変感慨深いものがあります。マクリ大統領とはさきほど首脳会談において、大変意義深い、有意義な意見交換を行うことができました。

 アルゼンチンはマクリ大統領のもとでの自由、開放的な経済政策、積極的な取り組みが日本のみならず、世界の注目を集めていると思います。今年はオバマ大統領をはじめ多くの首脳が貴国を訪問したことと思います。その中でこれからまさに停滞していた日本とアルゼンチンの関係を大きくかえていきたい。マクリ大統領とともに変えていきたいとこう思っているんです。まさに両国関係は飛躍的発展の機会を迎えているといっていいと思います。この機会を捉えて戦略的パートナーシップを構築し、関係をより一層強化することに合意しました。今日は午前中には日系人のみなさんとお目にかかる機会がございました。長い間、このアルゼンチンにしっかりと腰を据え、根を張り、地域の発展にも貢献しながら頑張ってきた存在というのは両国にとっては貴重な財産でもあると思います。そのことを私も再認識をしました。そういう意味でも日本とアルゼンチンは特別な関係なんだろうと思います。今後、両国の貿易投資、ビジネス環境の向上に取り組んでいきます。先ほど開いた経済フォーラムにもたくさんの日本、アルゼンチンのビジネスマンがきていました。これからいよいよ日本とアルゼンチン、経済分野においても発展していくなとそんな期待がもたれます」

 --ロシアのプーチン大統領と会談したことを踏まえ、北方領土問題についてうかがう。これまでも歯舞群島、色丹島の2島先行返還論があったが、2島を先行させる形で合意を目指すことも選択肢としてありうるのか。北方領土での「共同経済活動」について会談で話をしたのか。日本政府として検討する余地はあるのか

 「ただいまの質問の中でいろいろと個別具体的な言及があったが、北方領土に対する従来の立場を何ら変えているということはない。これははっきりと申し上げておきたい。日露の平和条約の問題は戦後70年を経てもなお未解決であることが示す通り、たった1回の首脳会談で解決するというものではない。そんな簡単な問題ではない。首脳間の信頼関係がなければ解決しない問題であり、私自身がプーチン大統領と直接やり取りをしながら一歩一歩着実に進めていく考えだ。現在進めている協議の中身については言及できないが、北方4島の将来の発展について日本とロシアが双方にとってウィンウィン(相互利益)の形で進めていくことが何よりも重要な視点であると確信している。その上で、経済を含めて日露関係全体を双方が裨益(ひえき)する形で発展させていく中で平和条約交渉についても前進を図っていくことが必要だと考えている」