幻の「夫婦控除」 税調・財務省の勇み足で頓挫 また官邸主導

来年度税制改正
税調総会に臨む自民党の宮沢洋一税制調査会長(右)と茂木敏充政調会長。配偶者控除の抜本見直しを打ち上げた2人だが、思惑通りに議論は進まなかった=11月21日、東京・永田町の自民党本部

 2017年度税制改正で、配偶者控除を廃止し、働き方を問わない「夫婦控除」を創設するという抜本的な所得税改革は本格議論が始まる前の10月初旬に早々と頓挫した。自民党税制調査会首脳や財務省幹部らの勇み足をきっかけに官邸や公明党が慎重姿勢を強めると、たちまち方向転換を余儀なくされた。

突然の表明に反発

 「一気に逆回転したのは、あの宮沢さんの発言だった」

 自民税調幹部が後悔するのは、8月30日、宮沢洋一税調会長が報道各社のインタビューで「17年度改正で配偶者控除の見直しを検討する」と高らかに宣言したことだ。

 9月9日には安倍晋三首相が政府税調で見直しを指示し、同14日には自民党の茂木敏充政調会長が共働き世帯にも適用する夫婦控除への転換に言及。だが、意図した方向とは反対の流れができつつあった。

 支持層に専業主婦らが多い公明党では、突然の改革案浮上に党員や支持者の反発が殺到。最優先課題の来夏の都議会選挙に加え、来年1月の衆院解散説が急浮上していた時期でもあり、同党幹部は「(自民党と)一切話もしていないのに前のめり過ぎる。選挙に影響しかねない」と怒りを隠さなかった。

官房長官が「引導」

 宮沢氏らが前のめりになったのには訳がある。主税局長から35年ぶりに就任した財務省の佐藤慎一事務次官が夫婦控除の創設案に意欲を燃やし、説明に回っていたためだ。

 ただ、財務省内にも夫婦控除には慎重論があり、一枚岩といえない状況だった。夫婦控除導入による税収減を穴埋めするには、代わりに中所得者まで増税を強いる可能性があり、幹部の中にも「政治的に難しい」との意見が少なくなかった。

 「(抜本的な見直しは)時間がかかる」

 公明党とのパイプを持ち、政権内で発言力の強い菅義偉官房長官が公言するようになると、宮沢氏や佐藤氏は受け入れる以外なかった。

 首相ですら手を触れることができない「聖域」とされた自民税調だが、一昨年の法人税改革、昨年の消費税率10%時の軽減税率導入で、官邸や公明党に押し込まれた。そして今年も。 いつか見た風景は繰り返された。(万福博之)