「過労死ゼロ」へ厚労省が緊急対策 労働時間の過少申告防止、悪質な企業名の公表拡大
「過労死等ゼロ」への緊急対策
電通の新入社員、高橋まつりさん=当時(24)=が過労自殺した問題を受け、厚生労働省の長時間労働削減推進本部(本部長・塩崎恭久厚労相)は26日、過労死ゼロを目指す緊急対策を公表した。実労働時間と自己申告時間がかけ離れないように企業に実態調査を求めたり、悪質な企業名の公表を拡大したりする。省令や通達を改正し、来年1月から順次、実行に移す。
高橋さんは実際の残業が月100時間を超えたにもかかわらず、労使協定で定められた上限の月70時間ぎりぎりで自己申告させられていた。同本部はこうした過少申告をなくすため、新しいガイドラインを作成し、企業に実態調査を要請する。
長時間労働が複数の事業所で行われている企業に対しては、労働基準監督署が会社幹部に健康管理やメンタルヘルス対策などについて指導し、実際に改善されたかどうかは全社的な立ち入り調査で確認する。
さらに複数の精神障害の労災認定があった場合には、企業に対しパワハラ防止を含めて個別指導を行うだけでなく、過労自殺が生じた企業には労基署が1年間の継続的指導を行う。
昨年には法違反を繰り返す悪質な企業名の公表制度が始まったが、違法な残業が従業員10人以上などに認められた事業所が「1年間に3カ所であった場合」に限定されていたため、これまで1件しか適用されていない。
今後は、過労死・過労自殺があった企業の別の事業所で、月100時間以上の違法労働が確認された場合に企業名を公表することになる。
塩崎厚労相は、「過労死をゼロにして、健康で充実して働ける社会を実現する使命感を持って臨んでいく。電通の事件で、事の深刻さを痛感した」と述べた。
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